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ACPは事前指示やリビングウィルと何が違う?

2018/05/22
西川 満則(国立長寿医療研究センター病院)

 この3月に改訂された厚生労働省による「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」には、近年諸外国で普及しつつある、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の概念が盛り込まれ、医療・介護現場への普及を求めています。また、今年4月の診療報酬改定でも、このガイドラインなどに沿った対応が在宅ターミナルケア加算の算定要件になるなど評価されました(関連記事:延命治療の中止でトラブルを招かないために)。

 このように医療・介護現場での実施が求められているACPですが、そもそもACPという概念は海外生まれですし、「事前指示(アドバンスディレクティブ)やリビングウィルと何が違うの?」と思われる医療介護職もいることでしょう。

 ACP、事前指示、リビングウィルともに、自分自身が意思表示できない状態になったときにも、自らが受ける医療・ケアに関する価値観や選好を明確化するものです。これらの異なる点と言えば、事前指示やリビングウィルは、医療や介護のプロによる助言がない状態で、本人だけでも決められる点が大きいでしょう。一方ACPでは、本人と家族らと医療介護職が話し合うことで、本人の価値観や選好に添う医療や介護を専門家とともに選ぶことができます。

 例えて言うなら、少し唐突な表現かもしれませんが、前者は通信販売に近いイメージでしょうか。よく知っているものを買う場合であれば通信販売で失敗なく買うことができますが、よく知らない物を買う場合は「予想に反する」品が届くリスクがありますね。医療介護について詳しい方であれば事前指示でもリビングウィルでも問題はないでしょう。一方、医療介護に詳しくない場合は何をどう希望していいかも分からないという問題があります。

 一方ACPは、行きつけのお店での買い物にイメージが近いように思います。自分の趣味やこだわりを理解している店員さんが、自分が好きそうな物を幾つか出してくれて、最終的にどれを買うかは自分で決める。自分がなぜこうゆうものが好きなのか、それにまつわる思い出すら知っている店員さんがいると安心感がありますよね。

 すなわち、理想的なACPでは、その人の人生の物語を知る医療介護職が本人の価値観や選好をよく知った上で、それに沿うにはどのような医療・ケアがいいのか考えて提示することで、患者は自分の希望に最も適した選択ができるというわけです。

著者プロフィール

西川満則(国立長寿医療研究センター病院エンド・オブ・ライフ[EOL]ケアチーム医師)●にしかわみつのり氏。1989年岐阜薬科大卒、1995年島根医科大卒、愛知国際病院ホスピス、名古屋大学呼吸器内科を経て、2000年国立長寿医療研究センター着任。2011年より現職。

連載の紹介

アドバンス・ケア・プランニング事始め
患者が望む終末期医療の実現に欠かせないアドバンス・ケア・プランニング(ACP)。とはいえ、ACPとはそもそもどのようなものなのか、疑問に思う医療介護職は少なくないだろう。人生の最終段階におけるケア(エンド・オブ・ライフケア)に詳しい西川氏が、ACPの基本となる考え方を解説する。

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