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医師3388人に聞く「医師の臨床研究に法規制は必要ですか?」
臨床研究の法規制、必要と必要なしが拮抗
3割弱は「研究がやりにくくなる」懸念

 2016年5月13日に「臨床研究法案」が国会に提出された。これはいわゆる「ディオバン問題」をはじめとする臨床研究に関する一連の不適正事例を受け、法規制について厚生労働省の検討会などで議論を続けてきた結果を反映したもの。参議院への提出後に選挙が行われると廃案になるため衆議院は採決を見送り、次期国会までの継続審議とした。よって成立するのは参院選後の臨時国会以降となる。

 日本では2014年時点の推定で、年間延べ5500件程度の臨床研究が実施されている。2013年に発覚した「ディオバン問題」を端緒に、同じノバルティス社の白血病治療薬による医師主導臨床研究、武田薬品の高血圧治療薬によるCASE-J試験、アルツハイマー病のJ-ADNI研究などにおいて、結果の信頼性を損なうような事例が次々と報道され、再発防止策の必要性が強調された。日本には治験を除いた臨床研究に法規制がなく、2014年に見直された厚労省の「臨床研究による倫理指針」では倫理審査委員会の機能強化や研究責任者の責務の明確化、データ改ざん防止のためのモニタリング・監査、利益相反に関する規定などが新設されたが、違反に対する罰則はない。

 一方、米国や欧州では治験であるか否かにかかわらず臨床研究を法律に基づいて規制している。例えば2001年に制定された「EU臨床試験指令」では、EU各国で定められる「処罰は実効性、比例制、および抑止力を有するものでなければならない」としている。だが、これらの規制によりアカデミアの研究活動が衰退したとの批判があり、リスクの低い臨床試験に対する規制緩和も2014年に行われている。

 厚労省の「臨床研究に係る制度のあり方に関する検討会」の報告書(2014年12月)は、「欧米の規制を参考に一定の範囲の臨床研究に法規制が必要との結論に至った」とした。一方で、研究者等の義務違反があった場合に直ちに罰則を課すのではなく、行政指導や改善命令等によっても改善が図られない場合にペナルティーを適用することを原則とすべきとした。また、利益相反の存在を否定するものではなく、適切に管理・公表されることが重要であり、利益相反に関する国民の理解が進むことで産学連携によるイノベーションの推進に資するとの記述もある。

 それを踏まえた臨床研究法案では、未承認・適応外の医薬品の臨床研究と、製薬企業から資金提供を受けて実施される臨床研究を「特定臨床研究」と位置づけ、これらの研究については実施する者が実施計画書を、認定臨床研究審査委員会の意見を聞いた上で厚労大臣に提出することを義務づけた。また、モニタリング・監査の実施、利益相反等の管理、インフォームドコンセントの取得、個人情報の保護、記録の保存も義務づけ、製薬企業には資金提供に関する情報の公開を義務づけた。

 特定臨床研究に起因する危害の発生・拡大を防止するために厚労大臣が発した命令に違反した場合には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が罰則として課せられる。研究対象者の秘密を漏らした場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、実施計画書の未提出や虚偽の記載、虚偽の研究記録の作成は50万円以下の罰金である。

 さて、前置きが長くなったが調査結果を見てみると、「治験以外の医師の臨床研究に法規制は必要だと思いますか?」という設問に対しては、「現行通り、厚生労働省の倫理指針があれば十分である」(29.8%)、「学会などがその領域に合わせたガイドラインを示せばよい」(20.6%)、「欧米のように、罰則のある法律が必要だ」(22.6%)、「ある程度の法規制は必要だが、対象となる研究の範囲を絞るべき」(27.0%)。大きく分けて必要なしと必要ありが拮抗していた(図1)。

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