
臨死体験とは、事故や病気で死にかかった人が、意識を回復したときに語るイメージ体験。「横たわる自分の姿を上から見下ろしていた」「三途の川を見た」「お花畑の中を歩いた」「死んだ人に出会った」など共通のパターンが知られている。
臨死体験について書かれた書物は数多いが、最も有名なのはジャーナリストの立花隆氏が書いた『臨死体験(上)(下)』(文春文庫、2000年)だろう。臨死体験研究の先駆者とされるエリザベス・キューブラー・ロス博士やレイモンド・ムーディ博士をはじめとする世界の主要な臨死体験研究者に直接インタビューを行い、様々な仮説や実験の結果を紹介し、その科学的解明に挑んだ本だ。
同書によれば、臨死体験を説明する仮説は大きく2つに分かれるという。1つが、臨死体験はエンドルフィン分泌亢進や酸素濃度減少など死ぬ間際の生理現象に基づく幻覚であるとする「脳内現象説」で、もう1つが、臨死体験は死後の世界の証明であるとする「現実体験説」である。立花氏は取材と考察の結果、明確な結論を得られないものの前者の立場を取っている。
一方で2012年、米ハーバード・メディカルスクールで15年間准教授を務めたエベン・アレグザンダーという脳神経外科医が自身の臨死体験を基に「死後の世界は存在する」とする著作を発表。すぐに『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラー(ノンフィクション部門)のトップに躍り出て、その後45週間ベストセラーにランクインし続けたという。その邦訳本『プルーフ・オブ・ヘブン 脳神経外科医が見た死後の世界』(早川書房、2013年)は、日本の医師の間でも話題になった。
こうした両論がある中、臨終の場面に立ち会うことも多い医師は臨死体験についてどう思っているのだろうか。Webアンケートで聞いてみた。アンケートでは、次の3つの選択肢を用意、臨死体験について自身の考えに近いものを1つだけ選んでもらった。
(1)エンドルフィン分泌亢進や酸素濃度減少など、生の最終段階における脳内現象。「死後の世界」はない
(2)人は肉体と霊魂から成り、霊魂が体験する「死後の世界」を示している
(3)全くの作り話である