
座長を務めた順天堂大学・大学院医学研究科泌尿器科外科学の堀江重郎氏と浜松医科大学泌尿器科学講座・大園誠一郎氏(左)
癌に対する有効な化学療法薬や分子標的薬が次々と登場している一方で、腎障害があるために有効な治療が受けられない、薬物療法の有害事象として腎障害が発生し、治療が継続できなくなるといった問題も発生している。これまで薬物療法を受ける癌患者の腎障害やその予防に焦点を当てたガイドラインはなく、実地臨床での対応は各施設や医師の経験、治験の情報などに基づいて行われてきた。
2016年6月、日本腎臓学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本腎臓病薬物療法学会が共同で作成した「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016」が刊行された。
作成の背景には、腎機能の評価方法が変わり、腎障害の病態やリスク因子が明らかにされつつあるなどの、臨床腎臓学での成果がある。同ガイドライン作成委員会委員長で順天堂大学・大学院医学研究科泌尿器科外科学の堀江重郎氏は、「臨床腎臓学の成果を抗がん薬物療法のマネジメントに応用し、エビデンスに基づく診療を行うことで、がん薬物療法の効果と、がん患者のQOLをさらに高めることを支援することが、本ガイドラインを作成した目的」とする。
横浜市で10月に開催された第54回日本癌治療学会学術集会のシンポジウム「がん薬物療法時の腎障害ガイドライン」(司会:浜松医科大学泌尿器科学講座・大園誠一郎氏、堀江氏)では、堀江氏と下記の4人のガイドライン作成委員により、Clinical Question(CQ)と推奨文の根拠が解説された。
聖路加国際病院腎臓内科、QIセンター 小松 康宏 氏
名古屋大学医学部附属病院化学療法部 安藤 雄一 氏
筑波大学医学医療系腎泌尿器外科学 西山 博之 氏
帝京大学医学部泌尿器科 武藤 智 氏
司会の大園氏は、「本ガイドライン作成委員会委員長の堀江先生を中心に、事務局の武藤先生が尽力され、このガイドラインが作成された。RCTが少ない領域であるため、ご苦労もあったと思う」と話した。シンポジウムの一部を紹介する。