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エリアレビュー・前立腺癌
転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の治療戦略を考える鍵は?
ドセタキセル、カバジタキセル、AR標的薬をうまく使うためのコツ

2016/08/10
フランスGeorges Pompidou Hospital / Rene Descartes University      Stephane Oudard氏

 「転移を有する前立腺癌の治療は、欧州では2002年から大きく変わってきた」。前立腺癌に対する欧州内外の臨床試験を牽引するフランスGeorges Pompidou Hospital / Rene Descartes UniversityのStephane Oudard氏は言う。

 前立腺癌治療には、2002年以降まずゾレドロン酸、ドセタキセルが登場した。そして2010年以降になると、ワクチン製剤Sipuleucel-T、カバジタキセル、デノスマブが使えるようになった。その後、アンドロゲン受容体(AR)を標的とした治療薬であるアビラテロンやエンザルタミド、アルファ線放射性医薬品Radium-223も登場、様々な治療戦略がとれるようになってきた。生存を延長させることを証明したこれらの薬剤の組み合わせは、とても大きな数になる。

 それでは、去勢抵抗性の転移を有する前立腺癌(mCRPC)に対して、どのように治療戦略を考えれば良いのか。それは、確定したシークエンスはないが、薬剤への抵抗性を見極め、薬剤の交叉耐性を認識し、患者の状態も考慮し、さらに投与期間にも気をつけながら、ドセタキセル、カバジタキセル、AR標的薬(ART)をうまく使うことがベストのようだ。その理由をOudard氏に聞いた。

4人に1人は新規AR標的薬に抵抗性を示す事実

 Oudard氏がまず指摘したのは、新規なARTに対して最初から抵抗性を示すprimary resistanceの存在だ。primary resistanceによって、治療する期間も費用も無駄になり、効果的な治療の開始が遅れてしまうことを避けるためだ。

 ARTにprimary resistanceを示す患者は4人に1人程度といわれている。骨転移を有するCRPC患者を対象としたアビラテロンまたはエンザルタミドのフェーズ2試験で、PSA低下が認められなかった患者がそれぞれ27%、29%であった(Efstathiou E, et al. J Clin Oncol 2011;30:637-643/ Efstathiou E, et al.Eur Urol 2015;67:53-60)。
 またアビラテロンのフェーズ3試験COU-AA-301でもPrimary resistanceを示す患者は3人に1人(De Bono JS, et al. N Engl J Med 2011;364:1995-2005)、エンザルタミドのフェーズ3試験AFFIRMでも4人に1人に見られた(Scher H, et al. N Engl J Med 2012;367:1187-97)。

 そこで、ARTに対するprimary resistanceな癌を同定し、早期に治療戦略を変更することが重要になるが、その方法として、Oudard氏は最初のアンドロゲン遮断療法(ADT)の反応期間、つまりCRPCになるまでの期間を挙げた。レトロスペクティブな解析ではあるが、最初のADT反応期間が12カ月以上の患者は12カ月未満の患者に比べて、次に投与されたホルモン療法(アビラテロン、エンザルタミドを含む)のPFSが有意に長いことが示されている(Angelergues A, et al. J Clin Oncol 2014; 32 (suppl 4), Abstract No.282)。

 また早期の画像診断がAR標的薬に対するprimary resistanceを見つけるために行われるべきであるということに、欧州専門家コンセンサスパネルの投票結果では多くの同意が得られ (Fitzpatrick JM, et al. Eur J Cancer 2014; 50, 1617-1627)、適切な最小検査期間として3カ月が推奨されている。

 血中循環腫瘍細胞のAR-V7(ARスプライスバリアント 7 のメッセンジャー RNA)についても、AR-V7陽性例と陰性例の比較から、AR-V7はアビラテロンとエンザルタミドに対する抵抗性と関連することが示唆されている(Antonarakis ES,et al. N Engl J Med 2014; 371:1028-1038)。一方で、AR-V7はタキサン系製剤の効果とは関連しなかった(Antonarakis ES, et al. JAMA Oncol 2015;1:582-91)。この結果も今後は新規AR標的薬抵抗性の検出に役立つ可能性がある。

 次にOudard氏が上げたのが、ドセタキセルに対するPrimary resistanceの存在。ドセタキセル投与開始後3カ月以内に抵抗性を示した患者である。これらの患者には新規AR標的薬よりも、カバジタキセルの方が効果があることを示すデータがあるという。イタリアのレトロスペクティブな解析で、186人のmCRPC患者のうち、17.7%がドセタキセルへのPrimary resistanc抵抗性患者だったがその後にカバジタキセルを投与された患者とAR標的薬(アビラテロン、エンザルタミド)を投与された患者を比較したところ、多変量解析でカバジタキセルの方が有意にOSを改善することが報告されている(Di Lorenzo G, et al. Eur Urol 2014; 65: 505-507)。

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