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エリアレビュー◎AACR2016・免疫療法
免疫システムに関連する低分子阻害薬の開発が目白押し
臨床面ではニボルマブの頭頸部癌への効果に注目

2016/05/24
神戸大学大学院医学研究科 腫瘍・血液内科学/神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科 教授 南 博信氏 

 AACR(American Association for Cancer Research)年次集会が4月16日から20日までニューオリンズで開催されました。学会全体として、やはり免疫チェックポイントに関する話題が多かったように思います。中でも免疫システムに関連した低分子の研究が盛んに発表され、低分子阻害薬の早期試験が開始されているものもありました。免疫チェックポイント阻害薬との併用により相乗効果が示されたものもあり、低分子阻害薬と既存の抗体薬の併用も期待できると思います。
 
 臨床面で最も注目されたのは、頭頸部癌に対するニボルマブの第3相試験CheckMate-141です。最近のAACRでは、このように優れた臨床試験の結果が発表されることもあります。CheckMate-141はすでにプレスリリースでポジティブな結果であることは公表されていましたが、今回のAACRで具体的な数字が報告されました。

日本も参加した頭頸部癌に対するニボルマブの試験でOSは2カ月延長

 CheckMate-141試験は、プラチナ系抗癌剤による治療歴のある頭頸部扁平上皮癌患者を対象に、ニボルマブを投与する群と治験担当医師が選択した単剤治療を行う群(対照群)を比較した試験です(#CT099)。患者はニボルマブ群と対照群に2:1の割合で無作為化割付けされています。この試験にはアジア人が1割強含まれ、日本も参加しています。対照群として使用された薬剤は、メトトレキサート、ドセタキセル、セツキシマブです。

 中間解析の結果、全生存期間(OS)のハザード比が0.70(p=0.01)でした。中間解析の早期中止マージン(p=0.0227)を超えたため、中間解析の段階で結果が公表されました。OSの中央値はニボルマブ群が7.5カ月、対照群が5.1カ月でしたから、既存の治療に比べてニボルマブはOSを2カ月以上延ばしていることになります。フォローアップ期間はそれほど長くはないのですが、durable responseが得られています。

 PD-L1の発現の程度で分けますと、発現が1%未満の人ではOSのハザード比が0.89であったのに対し1%以上では0.55でしたので、やはりPD-L1の発現が高いほうがニボルマブの効果は強いといえそうです。

 またヒトパピローマウイルス(HPV)のマーカーであるp16の発現陽性例ではOSのハザード比は0.56、陰性例では0.73であり、HPV陽性例で効果が高いことが示唆されます。HPV陽性例でニボルマブ群のOSの中央値は9.1カ月、対照群は4.4カ月、HPV陰性例ではニボルマブ群7.5カ月、対照群は5.8カ月でした。

 なお無増悪生存期間(PFS)にはOSほどの差がなく、有意差にはなっていなかったのですが、これはpseudo-progressionがあるためだと思います。Progressionというのは治療開始後に一時的に腫瘍が大きくなってもその後に縮小することで、免疫チェックポイント阻害薬治療で時に観察されることがあります。免疫チェックポイント阻害により炎症が起きて腫瘍が大きくなったように見えるためではないかと言われていますが、詳細は不明です。いずれにしても、RECIST基準ではprogressionと判断されてPFSのイベントとされても、実は効果があるためOSは延長した被験者がいた可能性があるのではないかと思います。

 ニボルマブの毒性は対象群よりむしろ軽く、Grade 3/4はニボルマブ群13.1%、対照群35.1%でした。ただ、1例にGrade 1/2のpulmonary toxicityが出ていたことは臨床的には注意が必要であると思います。

 日本においては、プラチナ系抗癌剤による化学放射線治療後の再発に、セツキシマブとニボルマブのどちらを先に使うかということが臨床上の関心になると思います。副作用からみると、ニボルマブのほうが使いやすいように思えますが、今後行われるサブグループ解析で、対照群における薬剤毎の治療成績を知りたいところです。

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