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TOPIX(2014年6月20日号より)
膵臓がんの間質は敵か味方か 他

2014/06/20
小崎丈太郎=日経メディカルCancer Review

●トピックス1
膵臓がんの間質は敵か味方か

 膵臓がんには、ほかの固形がんに比べて間質が著しく豊富で周辺組織で線維化が進行しているという特徴がある。こうした間質は膵臓がんの“鎧”として作用し、ゲムシタビンなどの治療薬が腫瘍組織に到達することを妨げ、結果的に薬物抵抗性の原因になっていると考えられてきた。しかしこの間質の形成を抑えると、膵臓がんの増殖速度も増し、非常に悪性なものに変わることが発見された。間質は膵臓がんの鎧ではなく、膵臓がんの増殖を抑えつける“拘束帯”である可能性が出てきた。

 Cancer Cell誌5月21日号に報告したのは米The University of TexasMD Anderson Cancer Center(MDACC)腫瘍生物学部長のRaghu Kalluri氏らのグループ。Kalluri氏は遺伝子操作によって間質を構成する筋芽細胞を形成せず、早期と進行期の膵臓がんを持ったマウスを作製した。するとこれらマウスの膵臓がんは増殖も速く、悪性化し、しかも死亡率も高くなることが明らかになった。

 「実験は間質が膵臓がんを防御していることを示すことを目的に実施したが、結果はこの仮説を裏切るものであった」とKalluri氏は、同大学が出したプレスリリースの中でコメントしている。

 ではこうしたマウスにゲムシタビンは奏効するだろうか。興味深いことにゲムシタビンを与えても病気の進行に影響しなかった。つまり、これまで信じられてきた“間質鎧説”は2重の意味で疑わしいものになってきた。

 間質が少ない膵がん患者は間質が多い患者に比べて予後が悪いことも知られていた。

 また間質鎧説に従って、間質の形成を抑えるヘッジホッグ阻害剤とゲムシタビンを併用する臨床試験が行われたこともあった。しかし併用によって病勢の進行が早まることから、2012年に臨床試験は打ち切られている。今回のKalluri氏の報告は、この臨床試験が失敗した原因を解明するものであるかもしれない。論文の中でKalluri氏は、「膵がんの腫瘍関連線維芽細胞(CAF)を標的とした治療法の開発に対してはより慎重になるべき」との見解を示している。

 京都大学大学院医学研究科外科学講座教授の高折恭一氏は「膵がんの間質組織については長らく論争がある。大別するとがんの浸潤を促進している、あるいはがんの浸潤に対する生体反応であるという2つの考え方がある。今回の論文は後者の立場をさらに進めたものと考えることができる。MDADCCや米JohnsHopkins大学などのグループは膵臓がんの免疫療法にも力を入れているので、今回の論文はそれを後押しするものになる」と語っている。

●トピックス2
東京地裁がオンコセラピーの請求を棄却

 がんペプチドワクチンの臨床試験で副作用を明らかにしなかったとする朝日新聞の報道について、ワクチンを開発していたオンコセラピー・サイエンスが朝日新聞社に損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた裁判の判決が5月12日にあった。東京地方裁判所民事第7部は原告らの請求を棄却する決定を下した。同社は「当社の主張が認められず誠に遺憾であり、内容を十分に検討し今後の対応につきまして協議してまいります」という談話を発表した。

 今回の判決とは別に同社は、中村祐輔氏(現米Chicago大学教授)とのサイエンティフィックアドバイザー契約を3月31日付けで終了したと発表している(発表は3月28日)。理由は「中村祐輔氏から申し入れがあったため」。同社はペプチドワクチンなど複数の臨床試験(治験)を実施しているが、進捗に影響をあたえるものではないとコメントしている。

●トピックス3
BOLERO-2試験ではOS統計学的有意差ならず

 乳がんを対象にmTOR阻害剤のエベロリムスの有効性を検証した第III相試験BOLERO-2試験の全生存期間中央値(mOS)が3月に英国で開催された第9回欧州乳癌会議(EBCC-9)で報告された。

 BOLERO-2試験は、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤治療後のHR陽性進行性乳がんを対象に、ステロイド性アロマターゼ阻害剤のエキセメスタン単独とエキセメスタンとエベロリムスの併用とを比較した。OSは副次的評価項目とされた。今回の報告によるとエキセメスタン単独ではmOSが26.6カ月、エキセメスタンとエベロリムスの併用群は31カ月で4.4カ月の差がついたが、ハザード比は0.89[95%信頼区間:0.73-1.10、p=0.1426]で統計学的に有意な値に達しなかった。

 すでに発表されている主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)ではHR=0.45[95%信頼区間:0.38-0.54、p<0.0001]で、エキセメスタン単独群を併用群は2倍以上、改善していた。

ASCO2014より

●トピックス4
RAS野生型大腸がんでセツ+FOLFIRIがOSを改善

 RAS遺伝子の変異を評価した第III相CRSTAL試験のレトロスペクティブブな解析でRAS野生型転移性大腸がん(mCRC)患者群において、セツキシマブ+FOLFIRI併用群ではFOLFIRI単独群に比べ全生存期間(OS)を有意に改善することが確認された。一方、RAS変異患者群においては両治療群間に差はなかった。1次治療でセツキシマブ+FOLFIRI療法はRAS野生型mCRC患者群(n=367)では、FOLFIRI単独群と比較して奏効率が27.7%上昇、無増悪生存期間(PFS)中央値が3.0カ月、またOSは8.2カ月の延長が確認された。FOLFIRIは大腸がんの標準レジメンの1つで5-FU、ロイコボリン、塩酸イリノテカンを併用する。

●トピックス5
再発卵巣がんでPFSを2倍に、新治療法が報告

 米国国立がん研究所(NCI)のグループが、再発プラチナ製剤感受性高悪性度漿液性卵巣がん患者を対象にした第II相試験でolaparib単独群とolaparib+cediranib併用群と比較したところ、併用群がPFSを2倍に延長するという結果を報告した。NCIでは第III相試験を計画している。

 Astra Zenica社のolaparibは単剤で米食品医薬品局(FDA)にBRCA変異陽性プラチナ製剤感受性再発卵巣がんを適応に優先審査の対象品目に指定されている。

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