
近畿大学薬学部医療薬学科准教授の長井紀章氏
インスリンをナノ粒子にすることで、結膜上皮からの吸収が可能になり、点眼による投与でも血糖降下作用を期待できる──。「点眼インスリン」という驚きの剤形について報告したのは近畿大学薬学部医療薬学科准教授の長井紀章氏らのグループだ(Deguchi S, et al. Pharmaceutics. 2021;13:375.)。
注射薬が主となるインスリンだが、患者負担を軽減するために吸入薬や経口薬など様々な剤形の開発が試みられている。点眼薬もそのうちの一つ。過去にもイヌやネコを対象としてインスリンの点眼投与について検討されたことがある。しかし、親水性の高分子であるインスリンは粘膜から吸収されにくく、特に眼から投与した場合にはすぐに鼻涙管を通って喉に落ちてしまうため、血糖をコントロールできるほどの量を送達することができなかった。