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EClinicalMedicine誌から
国民のワクチンカバー率がどのくらいで行動規制をなくせる?
1日の入院患者数を1000人以下にしながら経済の完全再開を目指すフランスの研究

 フランスPasteur研究所のCecile Tran Kiem氏らは、規制緩和を安全に行うためには、国民のワクチン接種率をどこまで高めればよいのかについて、数理モデルを使ったシミュレーションを行い、デルタ株のような基本再生産数が高い変異株が主流の場合には、接種率が十分に高くなるまで規制緩和を待つ必要があると報告した。結果は2021年7月14日のEClinicalMedicine誌電子版に掲載された。

 SARS-CoV-2ワクチンの効果は、接種のスピード、ワクチンの特性、接種を受ける個々の人々が抱えるリスクに依存する。ワクチンの供給が限られていた段階では、重症患者数や死亡数を最少にとどめるための戦略として、リスクの高い高齢者や併存疾患のある人を優先する方法が世界各国で用いられてきた。ワクチン接種を完了した人が増えてきた現在では、改めて疫学的効果が最も高い次の段階の戦略を考える必要がある。

 何度も医療の逼迫を経験する一方で、感染予防のための規制による経済的な損失が大きくなっている状況を鑑み、欧州では国民のSARS-CoV-2感染を抑制するための規制の緩和や撤廃が検討され、一部の国では実施されている。そこで著者らは数理モデルを用いて、COVID-19が医療システムに与える負荷を管理可能なレベルに抑えながら、規制を緩和するための条件をシミュレーションすることにした。国民のワクチンカバー率がどのくらいにまで増加すれば、行動規制をなくしても1日当たりの入院患者数のピークを1000人以下に抑えられるか、フランスのデータを用いて検討した。

 フランスのサーベイランスシステムで、公立と私立の病院を受診したCOVID-19患者のデータを収集しているSI-VICから、フランスの都市部在住の患者の特性に関する情報を入手し、年代ごとの併存疾患の有病率や、入院やICU入院、死亡の有無を確認して、個々の接種者のリスクの推定に用いた。それらに加えて、ワクチンの効果と接種率が、短期的、または中期的な疫学的効果に及ぼす影響を理解するためのモデルを構築し、規制緩和に必要な条件を検討した。

 ワクチンの特性については、重症化リスクを90%下げるのみ(重症化抑制)の場合と、重症化リスクを90%下げ、感染した人が他者に感染させるリスクを30%下げる(伝播も抑制)効果あり、重症化リスクを90%下げ、感染するリスクを80%下げる(感染も抑制)効果有り、という3つのシナリオを設定した。これらの効果はシミュレーションの期間中は持続するものと仮定した。

 接種者も、特性に基づいて、75歳超、64~74歳(併存疾患なし、1疾患保有、2疾患以上保有)、50~64歳(併存疾患なし、1疾患保有、2疾患以上保有)、18~49歳(併存疾患なし、1疾患保有、2疾患以上保有)に分類した。

 SARS-CoV-2の基本再生産数R0は、2.5~3の場合、感染力の強い変異株を想定した4などの場合をシミュレーションに加えた。

 まず、パンデミック開始以降のフランス都市部の住民のCOVID-19による入院とICU入院の件数の変化をモデルで再現した。さらに、年齢と併存疾患保有数に基づいて層別化された人々のCOVID-19による入院とICU入院および死亡の確率を推算した。例えば、2つ以上の併存疾患を有する70~74歳の高齢者がSARS-CoV-2に感染して入院する確率は20.2%で、併存疾患が2つ未満であれば、その確率は9.6%とした。

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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