日経メディカルのロゴ画像

Lancet Regional Health Europe誌から
免疫不全のCOVID-19患者に対する抗体治療は変異を誘導する
抗体投与後にウイルス量が増加した患者からE484K変異を検出

 ドイツDuesseldorf大学病院のBjoern Jensen氏らは、重度の免疫不全状態のCOVID-19患者に対して抗SARS-CoV-2抗体bamlanivimabによる治療を行い、この治療を適用された6人中5人に免疫逃避型のE484K変異が生じたと報告した。症例の概要を報告した論文は、2021年7月14日のLancet Regional Health Europe誌電子版に掲載された。

 SARS-CoV-2スパイク蛋白質に対する中和モノクローナル抗体が、COVID-19治療に適用され始めた。回復期血漿に比べ、抗体製剤は、結合特異性が高く、均一で、他の疾患の感染リスクがないといった長所を持つ。しかし、この治療により免疫逃避型の変異株の出現を誘導する可能性も予想されている。

 例えばインフルエンザでは、ノイラミニダーゼ阻害薬を免疫不全状態の患者に投与すると、ウイルスによる耐性獲得が速やかに生じて、ウイルスの排出が持続することが報告されている。SARS-CoV-2についても、免疫不全状態の患者では、感染の持続と免疫逃避型変異株の選択が起こる可能性が指摘されている。先に行われたSARS-CoV-2に対するモノクローナル抗体治療の臨床試験では、免疫不全状態の患者を対象から除外しているため、この疑問に対する情報は得られていない。

 ドイツでもモノクローナル抗体製剤bamlanivimabの臨床使用が承認されたため、著者らはドイツの大学病院1施設で、液性免疫や細胞性免疫が不全状態と見なされ、重症化するリスクが高いCOVID-19患者に抗体治療を試みることにした。6人の対象患者には、抗体の投与前と投与後にRT-PCR検査を行って、ウイルス量を測定した。さらに、一度減少したウイルスRNAのリバウンドが見つかった場合は、変異について調べるためにホールゲノムシーケンスも実施した。

 6人の患者の病状は、患者1がANCA関連血管炎と末期腎不全でリツキシマブとプレドニゾロンの投与を受けていた男性。患者2はAIDS患者の女性。患者3は濾胞性リンパ腫が再発したためにオビヌツズマブ、チオテパ、シタラビン、エトポシドの化学療法と造血幹細胞移植を受ける予定の男性。患者4は心臓移植後で、シクロスポリン、アザチオプリン、プレドニゾロンによる免疫抑制治療を受けている男性。患者5は慢性リンパ性白血病の男性。患者6は腎移植後でタクロリムス、ミコフェノラートモフェチル、プレドニゾロンの投与を受けていた女性だった。

 6人のうち5人で、bamlanivimab投与後に、ウイルス量がいったん低下、または陰性化したが再上昇した、もしくは投与後も低下せずに上昇していた。ウイルス量が再上昇した時点の標本から、抗体による中和に対して抵抗性を示すために免疫逃避型といわれる、E484K置換を有するウイルスが見つかった。E484K変異株は、bamlanivimab投与前には検出されていなかった。

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

この記事を読んでいる人におすすめ