日経メディカルのロゴ画像

nature誌から
ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症の抗体結合部位を調べる
ワクチン接種後のVITT抗体はPF4のヘパリン結合部位に含まれるアミノ酸を認識か

 アデノウイルスベクターを用いたSARS-CoV-2ワクチン接種者にまれに起こるワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)の特徴は、重症血小板減少症と、通常は起こらないような場所に発生する動脈や静脈の血栓症だ。カナダMcMaster大学のAngela Huynh氏らは、VITT患者の血清を用いた実験を行い、VITT抗体の血小板第4因子(PF4)に対する結合部位を同定し、nature誌電子版に2021年7月7日に報告した。

 VITTは、PF4を認識する抗体が血小板の活性化と凝集を誘導するという点において、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と類似している。しかし、VITTの場合は、ヘパリン暴露歴のない患者にも血小板減少症と血栓症が生じる。

 HITの患者の血清中に存在するIgG抗体は、血小板中に含まれている、70個のアミノ酸からなるPF4の特定の部位にヘパリンが結合した時点で表面に現れる、新しいエピトープを認識する抗体であることが報告されている。4量体を形成するPF4にヘパリンが結合すると、特異的なIgG抗体の結合が可能になり、三次元免疫複合体が形成される。同一のヘパリン分子上に次々とPF4とIgG抗体が結合して、高分子の免疫複合体が形成され、この多量体が、FcγRIIa受容体を介して血小板を強力に活性化し、血栓形成を促進する血小板由来マイクロパーティクルの分泌を促す。並行して単球なども活性化されて、凝固亢進状態を増強する。

 VITTについても同様の機序が想定されており、患者に高レベルの抗PF4抗体が存在することが示されているが、反応にはヘパリンは不要だ。そこで著者らは、SARS-CoV-2に対するアデノウイルスベクターワクチンの接種を受けてVITTを発症した患者に存在する抗PF4抗体の結合部位と特性について検討することにした。VITTの定義は、AstraZeneca社のSARS-CoV-2ワクチン接種後で、抗PF4 IgG抗体陽性であり、PF4により血小板の活性化が刺激される、ヘパリン暴露歴がない患者とした。

 著者らはまず、VITT患者5人(平均年齢は44歳、範囲は35~72歳まで、女性が40%)から分析用の血液標本を提供してもらい、ワクチンの初回接種から平均値で28日後(範囲は14~40日後まで)に採取した血清に存在していた抗PF4抗体が、PF4上のどこに結合するのかを調べた。用いたのは、アラニンスキャンニング変異導入法だ。これは、蛋白質の機能に必要なアミノ酸残基を調べるために、アミノ酸を1つずつアラニンに置換して影響を調べる方法だ。70個のアミノ酸の1つ1つをアラニンに置換した70の変異PF4蛋白質を作製し、野性型PF4に比べ血清標本との結合が50%以上阻害される変異蛋白質を同定した。

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

この記事を読んでいる人におすすめ