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Lancet Regional Health誌から
海外旅行者などに対するCOVID-19対策のシミュレーション
有病率が高い国からの旅行者が増えると検疫をすり抜けるリスクが増加

 香港大学のBingyi Yanga氏らは、香港に入国した海外からの渡航者のデータを用いて、COVID-19の隔離と検査の戦略の効果を検討し、有病率が低い国からの渡航者には隔離7日間の緩やかな戦略を取っても、有病率が高い国からの渡航者を14日間隔離する厳しい方法を実施した場合に比べ、香港住民の感染リスクは低かったと報告した。詳細は2021年6月20日のLancet Regional Health誌電子版に掲載された。

 COVID-19に対する各国の水際対策は、非常に厳格なレベルから、緩やかなレベルまで幅広い。一部の国は包括的な方針として実行しており、旅行者の出発国の感染状況や、同一国からの旅行者の数などにかかわらず、画一的な方法を適用している。また、一部は、SARS-CoV-2輸入リスクに基づくトリアージを試みているが、エビデンスベースのリスク評価法は明らかになっていない。

 そこで著者らは、COVID-19の有病率が低い地域からの渡航者に対して、到着後の隔離戦略を緩やかにしても、有病率が高い国からの渡航者に対して厳格な隔離を行った場合を上回る感染リスクを住民に与えることはないという仮説を立て、香港への渡航者のデータを利用して検討することにした。

 この研究では、感染者は平均5.2日でウイルス量がピークに達し、最長14日間感染力を保っていると仮定した。出発地で既に症状がある患者やウイルス量がピークに達した患者は、そもそも出国を止められる。飛行機に搭乗してからウイルス量がピークに達した患者は、香港入国時の検査で陽性になるため隔離される。香港到着後にウイルス量がピークに達した患者は、入国時の検査が偽陰性だった場合、感染力を保ったままコミュニティーに接触してしまうというシナリオだ。

 香港の水際対策は何度か変更されていたため、2020年4月1日から7月31日までの渡航者情報を用いて、政策変更の有効性を検討することにした。この期間は、入国者に14日間の隔離が義務づけられ、到着日と12日後にPCR検査が行われた。隔離期間に症状が現れた人にはさらに検査を実施した。ほとんどの渡航者が、到着日と12日後に検査を受けていたため、全員について隔離解除前に結果が得られたと考えることができた。陽性だった患者は病院に隔離された。

 直行便による香港への旅行者が多く、COVID-19有病率が異なる8つの国と地域(フィリピン、英国、米国、日本、韓国、オーストラリア、シンガポール、台湾)からの渡航者を分析対象に選んだ。香港空港に到着した8カ国からの直行便の搭乗客の数と、到着時の検査でSARS-CoV-2陽性になった人の詳しいデータを得た。分析をシンプルにするために到着時の検査結果のみ考慮した。

 出発地別の旅行者の数と感染者の割合などのデータを利用して、7種類の隔離方針の、SARS-CoV-2輸入リスクへの影響を検討した。隔離方針の有効性のモデル化にはベイジアンフレームワークを利用した。7種類の隔離方針は、以下の通りだ。全て到着時には検査を行うこととする。

1)隔離なしの場合(NoQ)
2)2回目の検査なしに7日後に隔離解除(Q7)
3)5日後の検査で陰性なら7日後に隔離解除(Q7/T5)(緩やかな戦略)
4)2回目の検査なしに14日後に隔離解除(Q14)
5)12日目の検査が陰性なら14日後に隔離解除(Q14/T12)(厳格な戦略)
6)2回目の検査なしに21日後に隔離解除(Q21)
7)12日後と19日後の検査の結果が両方とも陰性なら21日後に隔離解除(Q21/T12/T19)

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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