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BMJ誌から
AstraZeneca社のコロナワクチンは利益に比べて接種後の血栓症リスクは小さい
デンマークとノルウェーでAstraZeneca社のワクチン接種者のリスクを標準化発生率と比較

 アデノウイルスをベクターに用いたワクチンは、血栓症のリスクを増やす可能性が懸念されている。デンマークSouthern Denmark大学のAnton Pottegard氏らは、2016~18年のデンマーク国民と2018~19年のノルウェーの国民に起こった心血管イベントと血栓イベントの標準化発生率を、AstraZeneca社のSARS-CoV-2ワクチンChAdOx1-Sの初回接種を受けた人と比較するコホート研究を行い、両国のワクチン接種者は国民全体に比べ脳静脈血栓症などの発生率が高かったと報告した。しかし、ワクチンの必要性と効果に比べれば、絶対的なリスク増加は小さいと著者らは見なしている。結果は、2021年5月5日のBMJ誌電子版に掲載された。

 2021年3月の始めから中旬までの期間に、オーストリア、ノルウェー、デンマーク、ドイツ、英国その他の国で、ChAdOx1-S接種後の患者に重症または致死的な血栓塞栓イベントが発生したという報告が相次いだ。各国の報告によると、接種の5日後から24日後までの期間に、重度の血小板減少、出血、動脈血栓症、まれな部位の静脈血栓症(脳静脈洞血栓症、門脈血栓症、内臓静脈血栓症、肝静脈血栓症など)、および、下肢静脈血栓症または肺塞栓症などが接種者に発生したという。これを受けて欧州の7カ国が、このワクチンの接種を一時的に中止した。しかし、デンマークを除く欧州主要国は、欧州医薬品庁(EMA)がその後発表した、イベントの発生率は一般の人々に比べ高いわけではないという見解に基づいて、4月に接種を再開している。

 著者らは、各国からの自発的な有害事象報告のみを検討の対象にしていては、発生率を実際より低く見積もってしまう可能性があり、接種後のイベント発生率が一般集団より高いのかを厳格に評価すべきと考えた。そこでデンマークとノルウェーでこのワクチンを接種した人の心血管イベントと血栓イベントの発生率を明らかにし、両国の一般市民の過去のデータに基づく、年齢と性別で標準化したイベント発生率と比較することにした。

 ワクチンコホートは、2021年2月9日から3月11日までに、デンマークとノルウェーでChAdOx1-Sの初回接種を受けた18~65歳の人とした。両国に移住してから1年未満の場合は、過去の病歴を検討できないので組み入れから除外した。両国の医療情報データベースから標準化発生率を推計するために、デンマークは2016~18年の18~65歳のデータを、ノルウェーは2018~19年の18~65歳のデータを調べ、イベント発生率を調べた。

 主要評価項目は、ワクチン接種後28日間の動脈イベント、静脈血栓塞栓イベント、血小板減少症/凝固障害、出血による受診または入院とした。接種前の1年間に既にそれらのイベントを起こしていた患者は評価から除外した。追跡はワクチン初回接種から28日後、イベントの発生、患者の死亡、他国への移住、終了予定日(3月31日)のいずれかまで継続した。

 期間中に両国でワクチンを接種された人は28万2572人いた。このうち条件を満たしたのは、デンマークの14万8792人(年齢の中央値は45歳、80.1%が女性)と、ノルウェーの13万2472人(同44歳、77.6%)をあわせた28万1264人だった。28日後まで追跡を完了したのは20万6894人(73.6%)だった。追跡期間は中央値でデンマークが24日(四分位範囲23~26日)、ノルウェーが23日(22~24日)だった。

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シリーズ◎新興感染症
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