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JAMA Network Open誌から
COVID-19ワクチン接種の優先順位モデル
ワクチンが全国的に普及するまでのSARS-CoV-2関連死亡数を減らす戦略

 米国Washington大学のGeorge N. Ioannou氏らは、ワクチン接種率が集団免疫を期待できるレベルに達するまでに、米国民のSARS-CoV-2関連死者数を最小限に抑えるには、どんな人から優先してワクチン接種を進めるべきかを検討したモデルを構築し、2021年4月6日のJAMA Network Open誌電子版に報告するとともに、COVIDVaxと名付けたシミュレーターをネット上に公開した。

 米国でもSARS-CoV-2ワクチンの接種が進んでいるが、供給量に制限があり、輸送にも厳しい条件があって、米国民の多くが2回接種を終えるまでには時間を要すると予想されている。そのため米国CDCは段階的な接種を指示しており、最初に医療従事者と長期ケア施設入所者(フェーズ1a)、次に最前線で働くエッセンシャルワーカーと75歳以上の高齢者に(1b)、続いてエッセンシャルワーカーと65~74歳の高齢者および基礎疾患がありハイリスクの16~64歳(1c)に接種した後に、一般の人々(フェーズ2)に接種する計画を進めている。

 著者らは、SARS-CoV-2関連死亡リスクの高い人から接種していけば、ワクチンが国民に行き渡るまでの期間のSARS-CoV-2関連死亡を最小限に抑えられると考えて、一般の人々のSARS-CoV-2関連死亡リスクを予測するモデルの構築を試みた。また、これを利用して接種を進めた場合に予防できるSARS-CoV-2関連死亡者数を、年齢のみに基づく接種戦略やCDCが現在進めている段階戦略を用いた場合との比較を試みた。

 モデルの作成には、米国退役軍人(VA)ヘルスケアシステムに2020年5月21日までに登録されていた18歳以上の765万5212人の電子健康記録(EHRs)のデータを利用することにした。5月21日よりも30日以上前にSARS-CoV-2陽性が判明した6596人と、VAの長期ケア施設に入居していた1万3552人は除外して、763万5064人をコホートに組み入れた。コホートは、2020年5月21日から11月2日までの165日間追跡した。この研究でのSARS-CoV-2関連死亡は、PCR検査によりSARS-CoV-2陽性が判明してから30日以内の死亡と定義した。

 SARS-CoV-2の有害なアウトカムに関連する危険因子の候補として、年齢、性別、自己申告による人種や民族、居住地(郵便番号)、BMI、Charlson併存疾患指数を調べた。また、ハイリスクと考えられる8種類の疾患として、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝硬変、うっ血性心不全、糖尿病、高血圧、心筋梗塞、末梢血管疾患(PVD)の病歴も調べた。最後に、VA独自の予測スコアであるCare Assessment Need(CAN)スコアも候補に加えた。これらの候補の中から、多変量ロジスティック回帰分析により、追跡期間中のSARS-CoV-2関連死亡と有意な関連を示した因子をモデルに組み込むことにした。

 追跡期間を初期トレーニング期間(5月21日から9月30日まで)と後期テスト期間(10月1日から11月2日まで)に2分した。トレーニング期間のSARS-CoV-2関連死亡の危険因子に関するデータを用いて、SARS-CoV-2死亡リスクを推定するモデル(COVIDVax)を構築し、続いてテスト期間のデータを用いて内部検証した。モデルの識別能はROC曲線下面積で評価した。さらにファイザーやモデルナの臨床試験結果から、ワクチン接種者の90%はSARS-CoV-2関連死亡を予防できると仮定して、地域住民の接種率が段階的に増加していく課程での死者数を試算した。

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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