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NEJM誌から
ワクチン接種後の血栓症はヘパリン起因性血小板減少症か?
AstraZenecaのワクチン接種後に血栓症を起こした患者の病態を解析

 ドイツGreifswald医科大学のAndreas Greinacher氏らは、AstraZeneca社製のSARS-CoV-2ワクチン接種後に血栓症を発症した患者の血液検査と分析を行い、ヘパリン投与歴がないにも関わらずヘパリン起因性血小板減少症と同様の機序で血栓症が生じたことを示唆するデータを得て、2021年4月9日のNEJM誌電子版に報告した。

 ドイツでは、接種者の約4分の1に、AstraZeneca社製の組換えアデノウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCov-19が用いられた。2021年2月下旬頃から、このワクチンの接種者に、脳や腹部といったかなりまれな部位に血栓が生じ、同時に血小板減少症も見られたという報告が数例続いた。

 著者らは、ドイツとオーストリアで、このワクチンの接種を受けて血栓症または血小板減少症を経験した11人の患者の臨床特性と検査データを評価した。論文ではまず、最初の発端例(INDEX CASE)とされた症例の経過を報告している。

 それまで健康だった49歳の女性医療従事者は、初回のワクチン接種を2021年2月半ばに受けた。その後数日間は、軽い症状(疲労感、筋肉痛、頭痛)を経験した。5日目になって、悪寒、発熱、悪心と心窩部の不快感が始まり、10日目に地域の病院に入院した。

 入院時点の血小板数は1万8000/μLと低く、Dダイマー値は35mg/Lと高かった。ほかに、γ-GTPとCRP値が上昇していたが、それ以外の血液検査の結果は正常だった。鼻咽頭スワブを採取し、PCR検査を行ったところ、SARS-CoV-2陰性と判定された。

 CT検査で、門脈血栓症と肺塞栓症が認められた。血小板濃縮液を投与し、三次医療機関に移送した。到着時点で患者には、心窩部の不快感と悪心があったが、それ以外は健康な状態で、血圧は125/88mmHg、心拍数は65回/分、体温は36.5度だった。抗菌薬と鎮痛薬の静注を行い、4000単位の低分子ヘパリン(エノキサパリン)を単回皮下投与した。

 翌日も血小板数とフィブリノーゲン値は低く、Dダイマー値とアミノ基転移酵素値は上昇していた。腹痛は悪化し、CT検査では、門脈血栓症が進行して内臓静脈と腸間膜静脈にも広がっていることが明らかになった。さらに、腎動脈下腹部大動脈と両側の腸骨動脈に、小さな血栓が認められた。低用量未分画ヘパリンの静注を開始したが、直後に頻脈が生じ、消化管出血が疑われたため、投与を中止した。乳酸値は3.7mmol/Lだった。

 患者をICUに移し、再びCT検査を行ったところ、びまん性の消化管出血と、内臓静脈血栓症による、腸管壁と膵臓の灌流低下、および腹水が見られた。赤血球輸血と血小板輸血を行い、プロトロンビン複合体濃縮製剤、組換え活性型第VII因子製剤を投与したが、11日目に死亡した。剖検では、脳静脈血栓症も存在していたことが明らかになった。

 2021年3月15日までに、上記の患者以外に血栓性の合併症を経験した10人のデータを入手し、INDEX CASEの患者と共に分析した。11人の患者の年齢の中央値は36歳(範囲は22~49歳)で9人は女性だった。頭蓋内出血を起こした1人を除く10人のうち9人には、脳静脈血栓症が認められた。また、3人は内臓静脈血栓症、3人は肺塞栓症、4人はその他の血栓症を発症していた。10人のうち5人が複数部位に血栓を有していた。また、5人にはDダイマー値の大きな上昇(10mg/L超)と播種性血管内凝固が見られた。11人中6人が死亡した。

 ワクチン接種から5~16日後の期間に、1人を除く10人の患者に1件以上の血栓イベントが現れた。11人の患者は当初の分析で中等症から重症の血小板減少症と判断されていた。血小板数の最低値の中央値はおおよそ2万/μL(範囲は9000~10万7000/μL)だった。血栓症の発現前にヘパリン投与を受けた患者はいなかった。

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