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BMJ誌から
英国の新型コロナ変異株は死亡リスクが従来株の1.64倍
5万4906組のマッチドコホート研究で28日後までの死亡率を比較

 英国Exeter大学のRobert Challen氏らは、同国で2020年12月に報告された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株VOC-202012/1が、COVID-19患者の死亡リスクを変化させたかどうかを検討するためのマッチドコホート研究を行い、従来株に比べた死亡リスクは1.64倍だったと報告した。結果は2021年3月10日のBMJ誌電子版に掲載された。

 英国で昨年末に報告されたSARS-CoV-2の変異株は、VOC-202012/1と名付けられた(VOCは「懸念される変異株」と言う意味)。ウイルスのゲノム情報から得られた変異の状況に基づいて、ウイルス株間の関係を示した分子系統樹では、B.1.1.7系統に属することが明らかになっている。

 英国の調査では、2020年10月の始めには変異株感染者が存在していたことが判明した。変異株は英国南東部からロンドンへ、さらに英国全土へと広がり、12月31日には英国の新規感染者の4分の3から変異株が検出される事態になっていた。欧州各国は旅行制限などの対策を行ったが、短期間のうちに変異株感染者は世界中に広がった。

 変異株の感染力は従来株より高いことが既に報告されていたが、感染者の死亡リスクが従来株に比べ高いかどうかについては明らかではなかった。そこで研究者たちは、英国における変異株感染者と従来株感染者を対象にマッチドコホート研究を行い、死亡リスクを比較することにした。

 英国の新型コロナウイルス検査センターが用いているPCR検査の一部は、ウイルスのゲノム配列の複数の領域を検出対象にしている。変異株は、このPCR検査(Thermo TaqPathシステム)が検出対象としているスパイク蛋白質をコードする遺伝子の一部に欠損があるため、変異株感染者はスパイク蛋白のPCRでは偽陰性となり、ヌクレオカプシドなどそれ以外の領域を対象とするPCR検査は全て陽性になる。これを指標にすれば、変異株感染者と従来株感染者をかなりの精度で区別できることが確認されたため、英国内では、ウイルスのゲノム配列を調べる代わりに、TaqPathシステムの結果に基づいて、変異株感染状況を追跡している。

 変異株が死亡に及ぼす影響を調べるに当たって、研究者たちは感染しているウイルス株以外の患者特性の差をできるだけ小さくしようと試みた。分析対象にする時期は、感染者が急増し医療が逼迫していたため、それ以前に比べ死亡リスクが上昇していた可能性があったからだ。

 2020年10月1日から2021年1月29日までの期間に、英国の住民でPCR検査によりSARS-CoV-2陽性と判定された30歳以上の患者は94万1518人いた。このうちTaqPathシステムにより、従来株による感染と判定された患者は46万9714人、変異株による感染と判定された患者は39万4943人いた。検査結果が曖昧で判定できなかった患者は7万3649人だった。変異株の患者と従来株の患者の中から、年齢や性別、人種、居住地域、生活水準と、最初に陽性判定を受けたPCR標本を採取した日が一致するペアを5万4906組を選びだした。このうち85%超のペアが28日後までの追跡を完了できた。

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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