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JAMA誌から
SARS-CoV-2変異株レビュー:ワクチンは有効?
抗原部位に変異が生じてもワクチンの有効性維持が期待される

 2020年12月に英国で、感染性が増したSARS-CoV-2変異株に対する注意喚起が行われてまもなく、この変異株の感染は世界に広まった。米国Michigan大学Adam S. Lauring氏らは、2021年1月6日のJAMA誌電子版のViewpointに、SARS-CoV-2の変異の生じ方や、既知の変異株について解説し、変異株に対するワクチンの有効性に関する予測を示した。

変異、変異株、感染拡大
 ウイルスが複製すれば変異が生じる。RNAウイルスの変異速度は通常、DNAウイルスよりも速い。しかし、多くのRNAウイルスに比べ、コロナウイルスの変異は少ない。複製中に発生したエラーの一部を修正する酵素をコードする遺伝子を保有するからだ。

 ほとんどの場合、新たに起こった変異の結末は自然選択によって決定される。ウイルスの複製、伝播、免疫系による監視の回避において、他のウイルス株より優位となる変異を得た株の頻度は上昇し、ウイルスの適応度を低下させる変異が起こった株は、循環するウイルス集団から排除される傾向がある。しかし、突然変異率の増加や減少が偶然生じることもあり得る。自然選択と偶然の相互作用が、宿主内で、地域社会の中で、また、世界の各地域において、ウイルスの進化を引き起こしている。

 SARS-CoV-2の疫学について記述する際には、mutation(変異)、variant(変異株)、strain(株)という用語が入れ替え可能なものとしてしばしば使用されるが、これらを区別することは重要だ。Mutation(変異)は、ゲノム配列の変化を意味する。配列が異なるゲノムを持つウイルスはしばしば、variant(変異株)と呼ばれる。しかし、variantという言葉には問題がある。変異のあるウイルス株が2種類存在する場合に、それらの差が1つの変異に由来する場合も、多くの変異に由来する場合も、同様にvariantとされるからだ。厳密に言えば、variantは、strainのうち、変異により表現型(抗原性、伝播性、病原性など)に明らかな違いが生じているウイルス株をいう。

 世界的に広がった変異株として最初に報告されたD614Gでは、スパイク糖蛋白質の614位がアスパラギン酸からグリシンに置換されている。多くの科学者は当初、D614G変異株の重要性に懐疑的だった。しかし2020年12月に英国で報告された新たな変異株(B.1.1.7系統。VOC-202012/01と命名され、その後VUI-202012/01に名称変更された)の出現により、懸念は急に高まった。

 パンデミックにおいて、実際に脅威となるのはどのような変異株なのかを知るためには、SARS-CoV-2の進化と、このウイルスの遺伝疫学について理解する必要がある。また、新たに登場したSARS-CoV-2変異株の評価においては、以下のような点に焦点を当てる必要がある。変異株は自然選択と偶然のどちらによって存在頻度を高めたのか、自然選択によることが示唆された場合、どの変異が選択されたのか、それらの変異の適応における利点は何か、それらの変異は、伝播と感染拡大、抗原性、病原性にどのような影響を与えたのか。

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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