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BMJ Case Rep誌から
腹痛で救急受診した患者がCOVID-19だった症例
CTで偶然見つかった肺底部のすりガラス陰影から感染が判明

 米国Providence Holy Family HospitalのKyle B Varner氏らは、腹痛を訴えて救急部門(ER)を受診した、呼吸器症状のない腎血栓症患者がCOVID-19だったという症例を報告した。論文は2021年1月7日のBMJ Case Rep誌電子版に掲載された。この症例でPCR検査の実施を決めた理由は、腹部と骨盤部のCT検査に偶然映し出された肺底部のすりガラス陰影が認められたことにあった。

 COVID-19は肺疾患として知られているが、実際には多くの臓器系に有害な影響を及ぼすことが分かっており、受診時点の症状は様々だ。下痢や嘔吐、食欲不振、皮膚症状などが認められたものの、呼吸器症状はなかったCOVID-19症例も少なからず見つかっている。さらにSARS-CoV-2感染は凝固亢進を引き起こし、重篤なCOVID-19患者の3分の1に血栓性の合併症が生じることも報告されている。しかし血栓症は、COVID-19の典型的な症状ではない。今回著者らは、腎血栓症による腹痛がCOVID-19の最初の症状で、当初はそれ以外に症状の訴えがなかった症例について報告した。

 患者は46歳の男性で、受診前は健康だった。就寝中に突然、右下腹部の腹痛が発生して午前3時頃に目覚め、患者は翌朝に急病診療所を受診した。その時点では、腹痛のほかに下痢も認められた。患者は速やかにERに紹介された。

 ERで腹部と骨盤部の造影CT検査を行ったころ、右腎動脈分岐部に閉塞性の血栓が認められた。梗塞の範囲は大きく、右腎臓の50%超を占めていた。同時に、偶然ではあるが、中肺野と下肺野の辺縁にすりガラス陰影が見つかった。そのため胸部造影CT検査を追加したところ、両肺全体に多巣性で斑状のすりガラス陰影が見つかった。腹痛の原因は腎血栓だったが、患者は血栓症の危険因子を保有していなかった。続けて行った凝固能亢進の評価でも、注目すべき異常所見は得られなかった。患者はヘパリンの点滴静注を開始し、入院することになった。

 詳細な病歴を調べ直したところ、患者は入院前に軽度の発熱と軽症の咳を経験していたことが明らかになった。この情報は患者の主訴には含まれておらず、ERで偶然にCT所見が見つかってから、追加の質問で患者がようやく認めたものだ。入院日の夜にPCR検査で陽性が判明した。しかし、患者はSARS-CoV-2陽性者との接触は心当たりがないと否定した。

 ER入院中に、患者は軽度の低酸素性呼吸不全を発症、状態は進行して、酸素療法が必要になった。レムデシビルとデキサメタゾンの投与を開始し、抗凝固療法をそれまでのヘパリン点滴から低分子ヘパリンに変更した。患者は徐々に改善し、6日間の入院後に自宅に帰った。患者にはアピキサバン投与を6カ月間続けてもらった。

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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