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JAMA Network Open誌から
SARS-CoV-2は病院内のどこまで広がっている?
ウイルスRNAは病院内の様々な場所から検出可能だが培養陽性はまれ

 英国Imperial College LondonのGabriel Birgand氏らは、医療従事者と患者間のSARS-CoV-2伝播リスクに関係する情報を収集するために系統的レビューを行い、病院内の空気標本を採取してSARS-CoV-2を検出した研究を分析し、汚染されている可能性の高い場所と存在するウイルスの量などについて検討した。そして病院内のトイレや浴室、スタッフルーム、公共スペースなどの空気に高濃度のSARS-CoV-2のRNAが検出されたが、感染性を持つウイルスが見つかる頻度は低かったと報告した。結果は2020年12月23日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 SARS-CoV-2の伝播様式は、十分に明らかになっているわけではない。従来の感染症分類のように、飛沫感染と空気感染に単純に区分するのが難しく、室内に気流があれば、直径5μm未満のエアロゾル粒子が届く距離が大きくなると考えられる。そこで著者らは、病院内の空気のSARS-CoV-2汚染の実態を調べて、院内感染予防に役立つ情報を提供するために、系統的レビューを行うことにした。

 対象は、2020年1月1日から10月27日までにMEDLINE、Embase、Web of Scienceに登録されていた、病院内の空気のSARS-CoV-2汚染について報告していた英語で書かれた論文とした。プライマリケア施設や歯科を対象にした研究は除外した。

 論文から確認した情報は、周囲の環境、臨床状況、換気システム、空気サンプルの採取数、サンプリング方法、サンプリング場所と患者からの距離、サンプリングの時間と容積、SARS-CoV-2検出方法、陽性率、ウイルスRNA量、培養結果などだ。

 空気標本の採取場所により、病室など患者周辺の環境、トイレや浴室、臨床エリア(ワークステーション、待合室、調剤室など)、スタッフエリア(更衣室、スタッフルーム、会議室、食堂など)、公共エリア(入り口のホール、その他の屋内エリア、屋外エリア)に分類した。可能な場合は、ICUとそれ以外の病室、患者の重症度、陰圧室と自然換気、患者からの距離(1m以下と1~5m)などの比較も検討した。

 検索では2284件ヒットしたが、フルテキストが利用可能な論文は155件だった。このうち病院内の空気の汚染について報告していた研究は24件だった。24件はいずれも横断的な観察研究で、全てが定量的RT-PCR検査を行って、空気標本1m3当たりのウイルスのコピー数を推定していた。

 患者の周辺環境の空気をサンプリングしていた研究は23件、患者から離れた臨床エリアの空気は12件、スタッフエリアの空気は8件、トイレや浴室の空気は6件、公共エリアの空気を採取していた研究は6件あった。サンプル数の中央値は24標本だが、研究により2~160標本までさまざまだった。ウイルス培養を行っていた研究は5件だった。

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シリーズ◎新興感染症
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