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Cell誌から
SARS-CoV-2抗体価が維持される人の特徴は?
胚中心でB細胞の抗体遺伝子に起こる体細胞高頻度突然変異がポイントか?

 米国Harvard大学医学部のYuezhou Chen氏らは、米国で軽症COVID-19から回復した患者を対象に、月1回の頻度で最長4カ月後まで血液標本を採取し、保有する抗体の種類や抗体価を調べ、多くの患者が追跡期間中に抗体価は低下していたが、一部に抗体価は当初より上昇または一定レベルに維持される患者もいて、それらの患者はCOVID-19の症状の改善が早かったことを報告した。結果は2020年11月3日にCell誌電子版に掲載された。

 COVID-19から回復した患者には、SARS-CoV2のヌクレオカプシド蛋白質(N)、スパイク蛋白質(S)、スパイク蛋白質の受容体結合ドメイン(RBD)を標的とするIgG抗体が認められ、RBDに対する抗体が中和能を持つと考えられている。しかし、軽症で済んだ患者の大半は、重症者に比べて抗体価は低く、短期間のうちにさらに抗体価が低下することが観察されている。

 ウイルス感染に対する免疫系の反応は、通常、以下のように進行する。初回の感染時に、ウイルス抗原を認識したB細胞の一部は増殖し、末梢リンパ組織に胚中心という構造体を形成する。胚中心の中で、B細胞の抗体遺伝子に多様な体細胞高頻度突然変異(SHM)が生じ、それらの中から、抗原に対する親和性がより高いB細胞クローンが選択される。それらが、記憶B細胞や長期生存形質細胞に分化し、長期にわたって免疫記憶を担う。一方で、ウイルス抗原を認識したB細胞が胚中心外で活性化して、記憶B細胞や短期生存型形質細胞に分化することもある。

 これまでの報告では、COVID-19回復者が保有する抗S抗体のほとんどにSHMは見られておらず、SARS-CoV-2反応性の記憶B細胞においてもSHMの頻度は低く、抗原に対する反応性は弱かった。そうした記憶B細胞の分化は、胚中心外で起きている可能性があり、重症患者の免疫反応を調べた研究でも、これを支持する結果が得られている。著者らはSARS-CoV-2に対する抗体反応の特性と持続期間について検討するために、症候性のCOVID-19を経験した92人の抗体反応を長期にわたって調べることにした。

 対象は2020年3月から2020年6月までに米国マサチューセッツ州Bostonで軽症のCOVID-19から回復した92人。92人のうち5人が入院したが、それ以外は自宅で回復していた。91人はPCRにより、1人は抗体検査により、SARS-CoV-2陽性が確認された。初回の採血は、主な症状が見られなくなった時点で行い、それ以降は1カ月ごとに最長4カ月後まで血液標本採取に協力してもらった。

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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