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Lancet Neurology誌から
COVID-19死亡患者の中枢神経系剖検データ
中枢神経系にもウイルスは侵入するが直接は影響しない

 ドイツHamburg-Eppendorf大学のJakob Matschke氏らは、COVID-19で死亡した患者の脳に生じた神経病理学的変化を調べ、患者の中枢神経系(CNS)にはSARS-CoV-2が存在するが、ウイルスが直接CNSにダメージを与えている証拠は観察されなかったと報告した。結果は2020年10月5日にLancet Neurology誌電子版に掲載された。

 COVID-19は主に呼吸器症状を引き起こすが、腎臓や心血管系にも障害をもたらす。また、COVID-19患者には、味覚障害や嗅覚障害、めまいや頭痛、虚血性脳卒中、出血性脳症、てんかん性痙攣を伴う可逆性後頭葉白質脳症のような、CNSの障害も見られている。臨床データと検査値は、脳炎、片頭痛、多発性脳神経炎、ギランバレー症候群、フィッシャー症候群も、COVISD-19と関係する可能性を示唆している。

 しかしながら、SARS-CoV-2がCNSに侵入するのか、このウイルスが神経病理学的変化を直接引き起こすのか、それともサイトカインストームなどを介して間接的に変化を生じさせるのか、などは明らかではなかった。著者らは、これらの疑問を解決するためには、COVID-19により死亡した患者から脳の組織を得て、詳細に分析する必要があると考えて、剖検で得られた脳標本を分析し、グリア細胞の反応、炎症性の変化といった、COVID-19関連の神経生理学的特性について分析するとともに、CNSにおけるSARS-CoV-2の存在を検討することにした。

 2020年3月13日から4月24日までに、ドイツのハンブルグで死亡したCOVID-19患者を対象とするケースシリーズ研究を実施した。組み入れ条件は、定量的RT-PCR検査で陽性が確定した連続する死亡患者で、Hamburg-Eppendorf大学法医学研究室で解剖され、質の高い脳標本が利用可能だった患者とした。臨床症状やX線画像所見は組み入れ条件にしなかった。

 嗅球、上前頭回、大脳基底核、延髄、脳幹(延髄)、小脳半球のホルマリン固定パラフィン包埋組織標本を作成して、ヘマトキシリン-エオジン染色した。また、ベンタナ XTシステム・ベンチマークを用いて、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)、HLA-DR、transmembrane protein 119(TMEM119)、カルシウム結合蛋白質Iba1、CD68、CD8に対する抗体を用いて免疫組織化学染色を行い、アストロサイト、活性化型のミクログリア、細胞傷害性T細胞などを観察した。さらに、一部の患者の脳の特定領域を対象として、SARS-CoV-2の存在をqRT-PCRと免疫組織化学染色により検討した。

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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