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Lancet Respiratory Medicine誌から
吸入ステロイドはCOVID-19死亡リスクを減らさない
英国のCOPD患者と喘息患者の観察研究

 英国の慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息の患者で、吸入ステロイド(ICS)使用中にCOVID-19を発症した人の死亡のリスクは、ICS以外の治療薬を使用していた患者と同等かそれ以上であり、ICSによるリスク減少はないことが示された。英国London大学熱帯衛生医学大学院のAnna Schultze氏らは、観察研究の結果をLancet Respiratory Medicine誌電子版に2020年9月24日に報告した。

 COVID-19パンデミックの当初は、COVID-19入院患者における喘息とCOPDの有病率は、他の急性呼吸器疾患の有病率に比べ低いと報告されていた。これがきっかけになって、ICSがSARS-CoV-2の感染を抑制する、または重症化を抑制するのではないかと考えられるようになった。ICSは気道の炎症、浮腫、粘液分泌を抑制することが知られている。In vitro実験では、ICSのシクロソニドがSARS-CoV-2の増殖を抑制すること、ブデゾニドとグリコピロニウム、ホルモテロールを組み合わせると、季節性のコロナウイルス229Eに曝露した細胞からのサイトカインの分泌が阻害されることも示されていた。また、デキサメタゾンの経口投与もしくは静注が、COVID-19患者の死亡リスクを低減するというエビデンスが得られている。

 一方、ICSの場合には全身性の吸収量はわずかだが、1型インターフェロンの産生を阻害するため、ICSを日常的に使用している患者では、ウイルス感染症のリスクが上昇する危険性もある。が、これまでのところ、ICSの使用がSARS-CoV-2の感染とCOVID-19の転帰に及ぼす影響は明らかではなかった。また、日常的にICSを使用している患者のSARS-CoV-2感染リスクとCOVID-19重症化リスクも分かっていない。

 そこで著者らは、英国のCOPD患者や喘息患者の電子医療記録を利用して、ICSとCOVID-19関連死亡の関係を検討する観察研究を行った。プライマリケアで収集されていたCOPDまたは喘息患者のデータと、英国家統計局が収集している死亡に関するデータを関連づけて、COPD患者集団と喘息患者集団を2020年3月1日(追跡開始日)から5月6日まで追跡した。

 COPDコホートの組み入れ条件は、35歳以上で、喘息や他の呼吸器疾患ではなく、現在または過去に喫煙しており、ICSと長時間作用型β刺激薬+長時間作用型抗コリン薬(LABA-LAMA)を追跡開始日前4カ月以内に処方されていた患者とした。ロイコトリン受容体拮抗薬を処方されていた患者や、1年以内にネブライザーを使用した患者は除外した。

 喘息コホートの組み入れ条件は、18歳以上で、COPDや他の呼吸器疾患ではなく、追跡開始日前3年以内に喘息と診断されており、追跡開始日前4カ月以内に、ICSまたはICSと短時間作用型β刺激薬(SABA)を処方されていた患者とした。

 COPD患者では、コホートの患者とLABA-LAMAのみを処方されていた患者のCOVID-19関連死亡のリスクを比較した。喘息患者ではコホートの患者とSABAのみを処方されていた患者のCOVID-19関連死亡のリスクを比較した。交絡因子になり得る共変数として、年齢、性別、BMI、重複剥奪指標、高血圧、心疾患、糖尿病、癌、免疫抑制の有無、慢性腎臓病、インフルエンザワクチン接種状況、肺炎双球菌ワクチン接種状況、スタチン使用、増悪歴などのデータを調べた。

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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