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Lancet Respiratory Medicine誌から
COVID-19患者に組換えACE2を投与した症例報告
アンジオテンシンII濃度を低下させ、抗体産生を妨げない

 オーストリアKaiser Franz Josef病院のAlexander Zoufaly氏らは、同国のAperion Biologics社が開発してフェーズ2試験が行われていた組換えヒト可溶性ACE2(hrsACE2)を、45歳女性の重症COVID-19患者に7日間投与した人道的使用の症例経過を観察し、投与後に臨床状態が徐々に改善して退院に至ったと報告した。詳細はLancet Respiratory Medicine誌電子版に2020年9月24日に掲載された。

 ACE2はSARS-CoV-2の受容体であるため、COVID-19に対する治療薬開発における標的の1つとして注目されている。Aperion Biologics社のhrsACE2は、SARS-CoV-2のスパイク蛋白質に結合し、ウイルスを中和する作用と、ACE2を温存することにより、肺や腎臓、心臓など複数の臓器の損傷を抑制する作用を持つと予想されている。フェーズ1試験では、hrsACE2を89人の健康なボランティアに投与し、フェーズ2では急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者に投与した。いずれの試験も、hrsACE2の安全性のプロファイルが良好であることを示した。また、培養細胞やオルガノイドを用いたin vitro実験では、hrsACE2が、SARS-CoV-2を1000分の1から5000分の1に減少させることが示されている。

 今回著者らは、この治療薬候補を適用した初めてのCOVID-19患者の臨床経過を報告している。患者は45歳の女性で、COVID-19により入院後、短期間のうちに重症化していた。入院前7日間にわたって、咳、疲労感、筋肉痛、発熱、息切れを経験しており、入院の4日前からは悪心と下痢もあったという。

 この患者には2型糖尿病があったが、薬物療法ではなく、運動と食事療法によってコントロールしていた。また、バセドウ病と診断されて甲状腺切除術を受けたが、チロキシンを使用していたため、甲状腺機能は正常に保たれていた。BMIは正常域にあり、発症前の運動耐性は良好だった。

 入院時の体温は38.1度で、軽い低酸素症(室内気呼吸時のPaO2は56mmHg)だった。胸部X線画像では、両側肺にコンソリデーションが見られ、ウイルス性肺炎の存在を示した。

 鼻咽頭スワブのRT-PCR検査でSARS-CoV-2感染が確定し、ヒドロキシクロロキン(400mgを1日2回)と抗凝固薬ナドロパリン(0.4mgを1日2回)の投与を開始した。翌日撮影されたX線画像では、両側の末梢部のすりガラス陰影が拡大し、肺炎の進行を示した。鼻カニュラで高流量の酸素を投与してもFiO2は153mmHgだったため、挿管して肺保護換気を開始した。

 当初の検査結果は、軽度の白血球減少症と血小板減少症、および顕著なリンパ球減少症を示した。また、血清LD(636U/L)、フェリチン(880μg/L)、CRP(103mg/L)、Dダイマー(1.3mg/L)の値が顕著に上昇していた。

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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