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Lancet誌から
SARS-CoV-2野生株とヌクレオチド欠損株の比較
シンガポールのORF8領域に382ヌクレオチドの欠損がある株は症状が軽い

 2020年1月と2月にシンガポールのSARS-CoV-2感染者クラスターから、SARS-CoV-2遺伝子のオープンリーディングフレーム8(ORF8)領域に382ヌクレオチドの欠損(Δ382)を持つ変異株が見つかった。シンガポールNational Centre for Infectious DiseasesのBarnaby E Young氏らは、野生株に感染した患者と変異株に感染した患者の臨床特性やアウトカムを比較して、変異株の方が患者の症状は軽く、全身性の炎症を誘導するサイトカインの分泌も少なかったと報告した。結果はLancet誌電子版に2020年8月18日に掲載された。

Δ382変異株は、SARS-CoV-2の流行の初期に人々に感染したが、2020年3月以降は検出されなくなっている。シンガポールには武漢から持ち込まれたと考えられている。同じΔ382変異株は、2月に武漢から台湾に戻った旅行客からも検出されている。一方で、ORF8に別の欠失がある変異株が、バングラデシュ(Δ345)、オーストラリア(Δ138)、スペイン(Δ62)で見つかっている。

 欠損部のORF8がコードしている蛋白の機能は不明だ。しかし、In vitroの研究ではこの欠損はウイルスの複製能力に影響しないことが示されている。一方で、Δ382は、ORF6とN遺伝子の転写に変化を生じさせることが示唆されている。著者らは、Δ382変異株が感染者の臨床転帰などに及ぼす影響を検討することにした。

 2020年1月22日から3月21日までに、シンガポールの公的病院7施設に入院しており、PCR検査でSARS-CoV-2感染が確定した患者は278人いた。この中でΔ382変異株のスクリーニングを行い、臨床データもそろっていた131人を分析対象にした。

 主要評価項目は、酸素補充療法を必要とする低酸素症の発生とした。副次評価項目は血漿サンプル中の免疫関連物質(サイトカインなど)の濃度とした。

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