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Lancet Microbe誌から
香港住民の抗SARS-CoV-2抗体保有率は低い
血液標本が保管されていた1938人と湖北省からの帰国者452人の抗体検査結果

 香港大学のKelvin Kai-Wang To氏らは、酵素免疫測定法(EIA)とマイクロ中和アッセイを用いたSARS-CoV-2に対する抗体検査を開発し、検査特性を調べた上で、COVID-19流行前後の香港住民の血清陽性率を調査し、2020年3月に湖北省から避難してきた住民とも比較したが、流行後も香港住民の血清陽性率は低く、次のアウトブレイクが起こり得る状態だったと報告した。結果はLancet Microbe誌電子版に2020年6月3日に掲載された。

 著者らは既に、COVID-19発症から3週間以内の患者のほとんどに、SARS-CoV-2のヌクレオプロテインと、スパイク蛋白質の受容体結合ドメイン(RBD)に対する抗体が認められること、EIAで検出される抗体の量とマイクロ中和アッセイによって示される抗体の力価が相関することを報告していた。

 今回著者らは、PCR検査でCOVID-19の診断が確定した患者の血液標本を用いて、EIAとマイクロ中和アッセイの感度を調べ、COVID-19のパンデミックが起こる前に採取されていた血液標本を用いて特異度を調べることにした。またマルチコホート研究を行って、パンデミック前後の香港の住民のSARS-CoV-2血清陽性率と、中国の湖北省から香港に避難してきた人の血清陽性率を検討した。

 感度を調べた標本は、2020年2月26日から3月18日までに、香港の1病院にCOVID-19により入院し回復した45人(年齢の中央値は59歳、51%が女性)の患者から、症状発症後中央値29日の時点で採取されていた血清標本。マイクロ中和アッセイでは、45人中41人が陽性となり感度91.1%(95%信頼区間78.8-97.5%)になった。EIAでは45人中33人が陽性を示し感度73.3%(58.1-85.4%)だった。IgG抗体の種類別では、ヌクレオプロテインに対するIgGが57.8%(42.2-72.3%)、スパイク蛋白RBDに対するIgGが66.7%(51.1-80.0%)だった。マイクロ中和アッセイが陰性だった4人の患者は、全員がEIAでも陰性で、全員が軽症患者だった。マイクロ中和抗体アッセイとの相関は、抗ヌクレオプロテインIgGよりも抗スパイク蛋白RBDIgGの方が高かった。

 特異度の評価に用いたのは、2013~2014年に、香港の生きた家禽を取引する市場で働く99人から得た血清と、2016~2018年に臓器移植ドナー候補者53人から採取した血清だ。合計152人の標本提供者の年齢は中央値で52歳、72人(47%)が女性だった。全ての標本が抗ヌクレオプロテインIgG、抗スパイク蛋白RBDIgG、マイクロ中和アッセイで陰性で、偽陽性になった標本は1つもなかった。従って、EIAとマイクロ中和アッセイの両方の特異度は100%(97.6-100.0%)になった。

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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