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Lancet Microbe誌から
SARSとCOVID-19のウイルスはどこが違う?
様々な細胞株で増殖能力を比較した実験

 SARS-CoV-2とSARS-CoVはいずれも肺炎を引き起こすが、臨床像には差があることが分かってきた。香港大学のHin Chu氏らは、これらのウイルスの細胞指向性や細胞変性効果を比較するin vitro実験を行い、いくつかの違いを見いだして、Lancet Microbe誌電子版に2020年4月21日に報告した。

 既に、世界のSARS-CoV-2感染者数とCOVID-19死亡者数は、2003年に流行したSARS-CoVの感染者数と死者数を大幅に超えている。SARS-CoV-2感染によるCOVID-19とSARSの典型的な臨床像は似通っているが、いくつかの重要な違いも報告されている。たとえば、COVID-19患者の方が、下痢を経験する人の割合は低く、錯乱のような神経症状は多い。また、SARS-CoV-2の方が感染拡大のスピードが速い。しかしこれまで、そうした差異をもたらすウイルス-ホスト相互作用の違いは明らかではなかった。そこで著者らは、SARS-CoV-2の、細胞指向性、種指向性、複製速度、細胞変性効果について検討し、SARS-CoVの場合と比較することにした。

 実験に用いたSAERSCoV-2は、香港でCOVID-19と確定診断された1人の患者の鼻咽頭吸引液から分離、複製させたHKU-001a株だ。まず、ヒトのさまざまな臓器に由来する9種類の細胞株を対象に感染実験を行ったところ、SARS-CoV-2は5種類の細胞株で複製可能だった。SARS-CoV-2が最も効率よく複製したのは、肺腺癌由来のCalu3細胞と大腸癌由来のCaco2細胞で、肝細胞癌由来のHuh7、胚腎臓由来の293Tがこれに続いた。また、SARS-CoV-2は、グリオブラストーマ由来のU251細胞株でも、速度はおそいものの有意な複製を示した。一方、SARS-CoVは4種類の細胞株で有意な複製を示した。最も効率良く複製したのはCaco2細胞株で、続いてHuh7細胞株(肝癌細胞株)となった。なお、SARS-CoVは、U251細胞株では複製を示さなかった。

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