シンガポール保健省のSarah Ee Fang Yong氏らは、疫学調査によって明らかになった3つのCOVID-19クラスターに関係する人々に対してSARS-CoV-2抗体検査を行い、3つのクラスターのつながりを調べたところ、血清抗体検査は既に回復してPCR陰性になったCOVID-19患者や、無症状または軽症の感染者の同定に役立ち、より正確な疫学調査に貢献することが示唆された。結果はLancet Infectious Disease誌電子版に2020年4月21日に掲載された。
シンガポールでは、COVID-19疑い例に対して、積極的な症例発見とRT-PCR検査による感染の確認、発症前14日間の接触者の追跡と検疫が行われてきたが、感染源を特定し、感染がどこまで広がったのかを明らかにすることは難しかった。
PCR検査では、既に回復した元患者は同定できない。血清抗体検査なら、そうした症例も同定できるため、感染経路の特定を助け、封じ込め策の改善に役立つ情報を提供すると予想された。そこで著者らは、ELISA法を用いた抗体検査を行うために、米国ThermoFisher Scientific社のpcDNA3.1ベクターによるSARS-CoVやSAERS-CoV-2由来のヌクレオカプシド蛋白質と、SARS-CoV-2がヒト細胞への感染に利用するスパイク蛋白質上の領域を抗原とする、2通りの血清検査を準備した。また、シンガポールのDuke-NUS大学医学部が分離したウイルス株を用いたウイルス中和検査も用意した。
シリーズ◎新興感染症
Lancet Infectious Disease誌から
抗体検査はSARS-CoV-2感染経路の追跡に有用
シンガポールでRT-PCR検査とELISA法を併用したクラスター追跡の試み
2020/05/05
大西 淳子=医学ジャーナリスト
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連載の紹介
シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。
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