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BMJ誌から
COVID-19と闘う医療従事者の精神的支援
管理者はモラルインジャリー予防策を施すべき

 COVID-19のパンデミックは、世界の医療従事者を前例のない状況下においている。不可能な決断を迫られ、極めて高い精神的重圧に押しつぶされそうになりながら働いている。英国King's College LondonのNeil Greenberg氏らは、医療スタッフを管理する立場の人々に向けて、心のケアの重要性を訴える文書をBMJ誌電子版に2020年3月26日に発表した。

 現場で医療従事者が強いられる決断には、不足しているリソースを患者に平等に配分する方法や、リソース不足のなかで重篤な患者の全てに必要な治療をおこなう方法のほかに、自身の健康に生じた問題を解決する方法、患者に対して義務を果たしながら家族や友人との時間を作る方法など、様々だ。苦渋の決断をつぎつぎと迫られる状況は、モラルインジャリー(良心の呵責障害)や精神的健康上の問題を引き起こす可能性がある。

モラルインジャリー
 もともとは、戦争から帰ってきた兵士に見られた精神的な症状をこう呼んだ。自身の行動が、または行動しなかったことが、本人の道徳心や倫理規定に反することに起因する心理的苦痛と定義される。うつやPTSDのような一般的な精神疾患とは異なり、モラルインジャリーは精神疾患ではない。しかし、これを発症した人は、自己または他者に対するネガティブな考え(例えば「自分は恐ろしい人間だ」とか、「自分の上司はヒトの命をなんとも思っていない」など)を持ってしまう。さらに、恥、罪悪感、嫌悪感などを強く感じるようになる。こうした症状は精神的な健康を脅かし、うつやPTSD、自殺企図などを誘発する可能性がある。

 同様に、心的外傷後成長も生じうる。こちらは、困難に対処しなければならなかった人が、PTSD後に、心理的レジリエンス、自己肯定感などの高まりを経験する現象を言う。どちらを経験するかは、困難の前、最中、その後にどのような支援を受けたかに影響されるだろう。

 COVID-19との闘いにおいては、これまでのように、死亡した患者の親族に「あらゆる手をつくしましたが、残念です」とは言えず「スタッフとリソースが限られている中でベストを尽くしましたが、十分ではありませんでした」といわざるを得なくなる。これが彼らの心を長く傷つける可能性がある。

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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