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Lancet誌から
国の政策はCOVID-19対策にどう影響するか?
社会的距離拡大策が流行に与える影響を考察する

 2019年12月に武漢市で始まったCOVID-19の流行に対して、中国は、検疫、医療施設での患者の隔離と、社会的距離拡大(Social Distancing)策を行い、それらが封じ込め策として有用である可能性を示した。しかし、中国が行った厳格な対策が他の国でも可能かどうかは不明だ。英国Imperial College LondonのRoy M Anderson氏らは、SARS-CoV-2の感染拡大に対して国が取ることができる対策の例をあげ有効性について推測し、今後流行がどのような経過をたどるのかに関するコメントをLancet誌電子版に2020年3月9日に報告した。

 「社会的距離拡大」とは、人と人との接触をできるだけ減らす(距離を拡大する)ことであり、対策には、患者の自己隔離、接触者の自宅待機、外出自粛など、個人が自主的に行うものと、学校閉鎖、集会などの自粛や延期、人が集まる場所の閉鎖や制限、企業活動の縮小など、企業や自治体、政府の関係機関が主導して行うものがある。

 香港とシンガポールでは、2002~03年のSARSの流行が深刻だったが、これまでのところCOVID-19の管理はうまくいっている。政府の素早い対応と、市民によって行われた社会的距離拡大策が功を奏したと考えられる。

 流行が拡大するかどうかに関わる要因の1つが、基本再生産数(R0)だ。感染を抑制する対策が全くなされなかった場合に感染する人の割合は、1-1/R0で推算できる。中国ではR0はおおよそ2.5だったことから、何もしなければ国民の60%が感染したと考えられる。これは最悪のシナリオだ。しかし、感染予防のための対策が取られたため、中国での感染者は大きく減少した。

 一般に、流行が拡大すると、易感染性者が自然に減少して、または、感染管理のための対策が効果を発揮して、実効再生産数(R;平均的な1次感染者が再生産する2次感染者の総数)は低下する。1を下回った時点で流行のピークは過ぎ、新たな感染者は減少し始める。

連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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