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学会トピック◎国際脳卒中会議(ISC2020)
脳梗塞の血栓回収療法にtPA投与は必須か?

日本医科大の鈴木健太郎氏

 我が国で行われた前向き多施設共同ランダム化比較試験SKIP Studyから、急性脳主幹動脈閉塞に対して血栓回収療法を行う際、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)の投与は必須ではない可能性が示された。米国ロサンゼルスで開催された国際脳卒中会議(ISC2020、会期:2月19~21日)で、SKIP研究班(SKIP Studyの主任研究者:日本医科大学脳神経内科の木村和美氏、筑波大学脳神経外科の松丸祐司氏)を代表し、日本医科大学脳神経内科の鈴木健太郎氏が発表した。

 近年、内頸動脈や中大脳動脈などの脳主幹動脈閉塞に対して、カテーテルにより血栓を回収して血管を再開通させる血栓回収療法が普及してきた。ただし、こうした急性期脳梗塞に対する標準治療はtPAによる静注血栓溶解療法であり、血栓回収療法を行う場合も発症から4.5時間以内といった条件を満たす場合は、あらかじめtPAの投与が推奨されている。しかし、tPAを投与すれば出血リスクが増加する上、血栓量の多い脳主幹動脈閉塞ではtPAによる再開通率は低いことから、血栓回収療法単独治療の可能性が探られていた。

 血栓回収療法単独とtPA併用を比較した先行研究では、tPAを併用した方が治療成績は良好という報告が多い。しかし、いずれも後ろ向きの観察研究である上、血栓回収療法単独群にはtPAの適応とはならなかった症例が多く含まれているなど、結果の妥当性は高くなかった。そこでSKIP研究班では、tPAの適応となる症例を対象として、血栓回収療法単独とtPA併用を比較する前向きランダム化比較試験を行った。

 SKIP Studyの対象は、年齢18歳以上86歳未満、発症から4.5時間以内、CTまたはMRIによる血管撮影で内頸動脈もしくは中大脳動脈水平部(M1)の閉塞所見、NIHSS 6点以上といった条件を満たした204例。これを、tPAを投与せず血栓回収療法を行う血栓回収療法単独群(以下、MT単独群、101例)またはtPAも投与するtPA併用群(103例)に無作為に割り付けた。登録患者の平均年齢は74歳、男性比率62.7%などで、男性比率がMT単独群で少なかったが、それ以外に有意な群間差は見られなかった。

 有効性の主要評価項目とした90日後の生活自立率(改訂Rankinスケール[mRS]0~2の割合)は、tPA併用群57.3%(103例中59例)、MT単独群59.4%(101例中60例)と同等だった(MT単独群のオッズ比:1.09、95%信頼区間:0.63-1.90)。

 ただし、本試験は95%信頼区間下限が0.74を上回ればMT単独群の非劣性が証明される試験デザインであり、統計学的にMT単独群の非劣性を示すには至らなかった(非劣性のP=0.18)。その理由について研究グループは、「手技の熟練やデバイスの進歩によって試験計画時の想定よりも血栓回収療法の治療成績が良くなり、生活自立率の群間差が小幅になったため」(鈴木氏)としている。

 一方、安全性の主要評価項目である36時間以内の頭蓋内出血の発生は、tPA併用群52例(50.5%)に対してMT単独群34例(33.7%)であり、有意にMT単独群が低率だった(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.28-0.88、P=0.02)。90日後の死亡は、tPA併用群9例(8.7%)、MT単独群8例(7.9%)で同等だった。

 これらの結果から同研究班は「SKIP Studyは、脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法の際にtPAの併用が必要かを検証した初めてのランダム化比較試験と位置付けられる。非劣性であることは示せなかったが、90日後の生活自立率は同等で、出血リスクは血栓回収療法単独群の方が有意に低かった。脳主幹動脈閉塞との画像診断から直ちに血栓回収療法が行える施設で、今回の試験の登録基準に合致する患者であれば、tPA投与は不要である可能性が高い」と結論した。

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