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特集◎かかりつけ医の未来《動向編2》
注目集める富山県のかかりつけ医連携支援

 かかりつけ医機能を高めるための外部連携に目を向けると、診療所では、特に在宅患者の療養支援を目的とした病院との連携体制づくりの重要性が増している。

 厚労省は近年、診療報酬改定を通じて急性期病床の絞り込みを誘導。これにより、急性期後の状態の不安定な患者が在宅復帰する例が増えている。そのため在宅医療を担う診療所では、スタッフが病院の退院調整カンファレンスに参加して患者の状態を把握するなど、退院前から病院スタッフと協働することが求められている。

 また、在宅患者が急性増悪した場合、入院が長期化する懸念から受け入れに消極的な病院もあるため、スムーズに入院できる連携先を事前に確保することも不可欠だ。

 在宅患者に対し、心身の状態や家庭の状況などに応じた適切な医療・介護を提供するためには、訪問看護ステーションや介護事業所、ケアマネジャーなど地域の多職種による医療・介護連携ネットワークの構築もポイントになる。訪問看護ステーションとうまく連携できれば、患者、家族が電話連絡をしてきた際の一次対応を依頼するなど、医師の負担軽減を図ることもできる。

 地域の看護・介護職らと連携を深めるには「顔が見える」関係を作るための仕掛けも必要になる。自院の在宅患者に関わる院外の訪問看護師らに参加してもらい症例カンファレンスを開くのは、有効な手法だ。診療所の中には、認知症などに関する勉強会を開催して地域から幅広く医療・介護職の参加者を募り、連携ネットワークづくりにつなげているケースもある。

 一方、患者の状態変化を迅速かつ的確に把握するには、ICT(情報通信技術)を活用した情報共有も有効だ。

 例えば、医療機関同士でカルテの情報を共有すれば、かかりつけ医が患者を紹介入院させた場合に、それまで入院していた病院での診療内容を把握したり、外来患者に対する他院での処方内容を確認して重複処方や相互作用を防ぐといった使い方ができる。

 現時点では、ICTを活用した情報共有は、同じ法人グループ内の医療機関や介護事業者の間で行うにとどまっているケースが多い。地域の様々な医療・介護事業者間で情報を共有するには、より広範なシステムの構築が必要になる。

 《事例編2》で紹介した島根県の「まめネット」のように、都道府県や市町村、二次医療圏などの地域単位でICT連携ネットワークを構築するケースも現れてきた。日医総研ワーキングペーパー「ICTを利用した全国地域医療連携の概況(2016年度版)」によると、ICTを活用した地域医療連携ネットワークは約310あり、155万人近い患者の診療情報が共有されている。都道府県単位で連携ネットワークを構築している事例としては、島根県の他にも、長崎県の「あじさいネット」や沖縄県の「おきなわ津梁ネットワーク」などがある。

注目集める富山県の連携支援

 これまで述べてきた5つの条件の達成に取り組む医療機関は徐々に増えてきている。ただ、多職種連携ネットワークの構築などは、医療機関単体で取り組むには少々ハードルが高い。そのため、自治体や医師会が、かかりつけ医機能の向上に向けた事業を手掛けるケースも出てきた。

 中でも注目を集めているのが、富山県の事例だ。県東部の新川医療圏(黒部市など)では、保健所のサポートにより5病院、22診療所に加え調剤薬局29件、訪問看護ステーション6件が連携し、在宅患者に24時間対応できる診療体制を構築。医師だけでなく多職種が連携し、患者の医療・療養に関する情報を共有している(図4)。

 高齢化に伴い在宅診療に移行する患者が徐々に増え、診療所の医師の負担が増えていった。そこで、「診療所同士が連携する仕組みの必要性が生じたことが連携体制の構築のきっかけとなった」と話すのは新川地域在宅医療療養連携協議会会長で藤が丘クリニック(富山県黒部市)院長の藤岡照裕氏だ。

 当初は新川医療圏にある8つの診療所が連携して、急変時などに24時間対応できる診療体制を構築。その動きを保健所がサポートし、連携範囲を多職種にも拡大。情報共有のためのツールを導入し、在宅患者が急性増悪するなど入院が必要になった場合には、地域の4つの公的病院のいずれかが必ず受け入れることも取り決めたことで、今の体制になった。

 現状の課題は、「小規模な訪問看護ステーションが多く、訪問看護体制が弱いこと」と藤岡氏。今後はそうした弱点をカバーし、より医療者が無理なく在宅療養患者をサポートできる体制を構築していく予定だという。

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