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シリーズ◎2018診療・介護報酬同時改定
遠隔診療への報酬上の評価のあり方めぐり議論
診療側は「科学的根拠なく安易に評価することは認められない」と強調

 厚生労働省中央社会保険医療協議会中医協)は11月1日の総会で、2018年度診療報酬改定に向けて外来医療について議論した。外来診療や訪問診療とスマートフォンを使ったオンライン診察を組み合わせた事例が紹介され、遠隔診療の対象患者や実施条件などが論点として示されたが、診療側委員からは診療報酬上評価することに慎重な意見が相次いだ。

 厚労省はスマートフォンなどの情報通信機器を用いた遠隔診療を(1)情報通信機器を用いた診察、(2)情報通信機器を用いたモニタリングの二つに区分してそれぞれの論点を挙げた。(1)は医師が機器を用いて患者と離れた場所から診療するもので、現在は診療報酬上「電話等による再診」として評価されている。(2)は通信機能を備えた機器を用いて医師が患者情報の遠隔モニタリングを行うもので、診療報酬上の評価としては「心臓ペースメーカー指導管理料」の「遠隔モニタリング加算」がある。

 (1)の機器を用いた診察では、福岡市で行われている「かかりつけ医」機能強化事業の事例が紹介された(関連記事:遠隔診療でかかりつけ医機能は強化できるのか)。外来診療や訪問診療にオンライン診察を追加したり、一部をオンライン診察に置き換えることで、訪問診療の時期を早めるなどきめ細かな診療につながったり、画像によって状態を確認することで診療側の不安が軽減したなどの効果が報告された。

 事例を踏まえ、厚労省は情報通信機器を用いた診察を診療報酬で評価する場合、遠隔診療を提供する前に一定の受診期間を設けたり、事前の治療計画の作成・患者の同意取得などを求めることを要件とすべきでないかとの見解を示した。なお、現行の電話等による再診は、患者やその看護に当たる者から治療上の意見を求められて指示をした場合にのみ算定できる。外来診療や訪問診療を補完する遠隔診療とは診療の性質が異なるため、電話等による再診とは異なる形での評価が必要との認識も示した。

 厚労省の提案に対し、日本医師会常任理事の松本純一氏は、「過去にも同じ主張を繰り返してきたが、遠隔診療を診療報酬で評価するには科学的根拠が必要であり、安易に診療報酬で評価することは認められない。画面を通しての診察では、患者の自己測定結果が正しいかや、本当に服薬しているかは確認できない。患者の利便性を重視して遠隔診療を積極的に活用することは認められない」と強調。一方で、診療報酬で評価する場合の要件については「引き続き検討したい」と話した。

 日医副会長の今村聡氏も、「エビデンスをしっかり積み上げるべき。診療に用いる情報通信機器、対象疾病、条件などについてガイドラインを作成し、ルールが守られる仕組みにしないといけない」と評価の新設には慎重な姿勢を示し、「まずは保険者による保健指導でICT活用を広げ、それを徐々に拡大すべきではないか」と主張した。

 一方、全国健康保険協会理事の吉森俊和氏は、「生活習慣病で比較的症状が安定しているケースなどでは遠隔診療の実施を評価してもいいのでは」と話した。その場合、患者の同意を得るだけでなく、不適切な遠隔診療の実施を防ぐために年間の算定回数に上限を設けることなどが必要との認識を示した。

 健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、「働き盛りでなかなか通院できない生活習慣病患者の重症化を予防したり、治療からの脱落を防ぐためにもICTを活用した医学管理を進めるべき」と主張。例えば3カ月に1回の外来受診の合間に遠隔診療でフォローアップを行うことなどを提案した。

 対面診療の補完としての遠隔診療を評価すべきという支払い側委員と、さらなるエビデンスやガイドラインの整備などを求める診療側委員で議論が対立し、情報通信機器を用いた診察に対する評価のあり方についての結論は先送りされた。

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