日経メディカルのロゴ画像

特集◎年代別 医師の転職大研究
【40代】生活重視の転職、病床再編への不安も

 自分の専門分野なら一通りのことはできる──そんな40代の勤務医が転職に踏み切るのには、幾つかのパターンがある。

 多いのは、自身や家族の「生活」を重視した転職だ。日経メディカル Onlineの調査では、過去3年以内に転職した40代の医師のうち、理由として「労働時間や給与など処遇面に不満があったから」を挙げた医師が34.1%(複数回答)と最も多く、次いで「通勤の利便性、子どもの教育、親の介護などの事情から」(31.4%)が多かった(5月12日公開記事【30代】の図2を参照)。

 生活面を重視して転職先を選ぶ場合、判断材料となるのは収入や労働時間などだ。「40代は子どもの教育や親の介護などの問題が関わってきて、他の世代とは背負っているものが違う。子どもを私立大学医学部に行かせる可能性があれば、収入を重視した転職が多くなる」とニューハンプシャーMC代表取締役の柴田雄一氏は語る。

 もっとも、収入を増やそうとすると労働時間も増えがち。同社取締役の中村正志氏によると、2つの条件を両立させることも視野に入れ、急性期病院の医師が在宅クリニックに転職する例が目立つようになったという。最近は医師のチームを組んでオンコールなどの負担を軽減させる在宅クリニックが増えつつあり、以前と比べると仕事と生活のバランスを取りやすくなっている。

 神奈川県藤沢市で2件の診療所(湘南なぎさ診療所、湘南ライフタウン診療所)を運営する医療法人南星会の事務長の中村哲生氏は、「在宅医療に携わると24時間365日、携帯電話に縛られて旅行にも学会にも行けないというのでは長く続けていくのは難しい」と語る。南星会では「医師のQOLを上げる」狙いから医師の人員体制の拡充を進めており、オンコール対応は1週間担当したら次の5週間は外れる形になっているという。

 もちろん、40代でも臨床のキャリア形成重視の転職をする医師は少なからずいる。「特に救急医療や総合診療など、従来、他科に比べて体系立った研修の場が少なかった分野では、40代でもキャリア形成重視の転職をする傾向がある」と中村氏は話す。

「転職活動をしてもいいぞ」
 さらに今後は、勤務先の病床再編や病院の統廃合を契機とした転職が増えるとみられる。

 「院長から、『うちの病院は急性期として生き残れるかどうか分からないから転職活動をしてもいいぞ』と言われ、転職を考えるようになりました」。医師のヘッドハンティングを手掛ける半蔵門パートナーズ代表取締役の武元康明氏は昨年、40代の病院勤務医からこんなメールを受け取った。

 武元氏によると、以前同社がヘッドハンティングを打診した際に固辞した医師たちが、最近になって「転職を検討したい」と連絡してくることが増えており、メールの件もそのうちの1つだという。

 医師たちが口にする動機として多いのが、自院の病床再編への不安だ。診療報酬制度の誘導などで、病院が急性期病棟を維持することが難しくなる中、急性期病床を縮小して回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟などに転換する病院が増えている。特に急性期志向の30~40代の医師にとっては、キャリア形成の面でマイナスになりかねず、転職を考え始めているようだ。

 また、個々の病院内の病床再編にとどまらず、地域単位での病院統廃合の影響もある。近年、同じ地域に似たような規模・機能の病院が並立することは非効率であるとして、自治体病院を中心に病院を統廃合する動きが出ている。武元氏は、「昨年あたりから、我々が声を掛けている医師の中に、統廃合によるポスト減少などを懸念して転職を検討したいと言う人が現れてきた」と明かす。

緩和ケア医や総合医が人気
 とはいえ、医師の専門分野などによっては、病院の病床再編はキャリアアップのチャンスにもなり得る。急性期以降の病期の入院医療や在宅医療などを強化する狙いから、医師を新たに招へいする動きが出ているからだ。

 図4は、半蔵門パートナーズのヘッドハンティングにより転職した医師の年齢と付与された役職を示したものだ。年齢の内訳を見ると、40代が最も多く、過半数を占めていることが分かる。武元氏は「特に総合診療や緩和ケア、リハビリテーションなどの分野で、40代の専門医を招へいしたいというニーズが増している」と話す。総合診療医には、急性期後の病期から在宅復帰、その後のフォローまでをトータルに管理する役割を期待。緩和ケア医には病棟に加え在宅ターミナルケアを任せたいという狙いがある。

この記事を読んでいる人におすすめ