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特集◎日常診療に潜む危険《暴力・暴言 2》
訓練で対応力強化、クレーマーに組織で対抗

 1つ対応を間違うと凶悪事件に発展しかねないのが、医療者を悩ます「暴れる患者」の存在だ。日経メディカル Onlineが実施した調査では、医師の半数近くが暴力・暴言やセクハラを経験していた。

 暴れる患者から医療者を守るために、悩みながらも試行錯誤を続ける医療機関を取材した。

対応困難例は診療拒否を
 父親に付き添われて救急外来を受診した20歳代女性。救急外来での対応に不満を抱き、診察に当たった男性医師につかみかかろうとした。危険を感じた医師はその場を離れた。看護師と救急隊員が制止しようとするも、患者は避難する医師を追い掛け、救急カートを倒そうとするなど暴れた。止めに入った看護師や救急隊員らに暴行を働いた揚げ句、医師が避難している部屋に押し入ろうと執拗にもがく。この間、1時間以上にわたりわめき散らした─。

 これは川崎市立多摩病院(神奈川県)で2年ほど前に発生した事例だ。最終的には、警察に通報することで対処したという。

 同病院は、指定管理者として聖マリアンナ医科大学が運営しており、大学病院同様、院内に警察OBを配置(日勤、1人体制)するなど、院内での暴力・暴言、セクシュアルハラスメントなどに対応してきた。2012年4月からは、本格的な取り組みを開始。事例発生時の連絡・相談の手順をフローチャートにまとめ、院内医療事故防止マニュアルや全職員が携帯するポケットマニュアルに掲載するなど、周知徹底を図っている。

 発生事例については、電子カルテに暴力・暴言報告書として入力し、総務課へ提出する仕組みも取り入れた。集約した事例は、定期的に開催する医療安全推進部会で情報を共有し、対応を検証している。

 暴言や暴力行為を繰り返す患者で、病院として継続診療が困難と判断した場合には、行政の担当部署へ報告する。また、患者本人にも自院での診療が不可能であることを告げ、カルテ上にも明記している。なお、医療者が「緊急回避的な診察が必要」と判断した事例には、「警察立ち会い」の下で、十分な予防策を講じた上で診察を行うと決めている。

 同病院医療安全管理室によると、2012年からの2年間で発生した暴力事案は、主なものだけで5件あった。事例によっては、警察に被害届を出したものもある。

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