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特集◎アレルギー診療の新常識《5》アレルギー発症予防
アトピー予防に有力視される「経皮感作仮説」

 この数年、食物アレルゲンへの感作は経皮的に成立し、それがアレルギー発症につながるという「経皮感作仮説」が世界的に注目を集めている。

 食物アレルギーの有病率は乳幼児に多いことから、かつては消化機能の未熟などが感作の成立に影響していると考えられ、食物アレルギーは食べることで感作が起き、発症するとの説が支持されていた。

 このような考えから、母乳や胎盤を介したアレルゲンへの感作を防ぐ目的で、米国小児科学会は「妊娠・授乳期の母親は食物アレルギーの原因となりやすい卵やピーナツなどの食物の摂取を制限し、乳幼児に対しては乳製品や卵、ナッツ類や魚の摂取をできるだけ遅らせるべき」との声明を2000年に発表。この声明を受け、日本でも予防的な除去指導が普及した。

妊娠・授乳期の除去に効果なし
 だが、その後の疫学研究の結果、妊娠・授乳期の母親における予防的な食物除去や、離乳食開始時の除去が、食物アレルギーの有病率減少に寄与しないことが示され、08年に米国小児科学会はかつて公表した声明を撤回。現在は我が国でも予防的な除去の必要性は否定されている。

 同時期に英国から、新たな予防法として「二重抗原曝露仮説」が提唱された。これは、経皮的にアレルゲンに曝露されると感作は成立するが、適切な量と時期に経口摂取された食物に対しては、逆に免疫寛容が誘導されるという考え。その後、この仮説を裏付ける研究が世界各国で報告され、現在は食物アレルギーの発症機序として認められるようになってきた。

 この仮説を裏付ける研究の1つが、1万3971人のデータを用いた英国の出生コホート調査の結果だ。同研究は妊娠・授乳期の食事内容と食物アレルギーの発症の関係を調べたものだが、有意差は得られなかった。

 一方、副次的評価項目として検討された環境要因では興味深い知見が得られた。ベビーオイルとしてピーナツオイルを使用していた小児で、ピーナツアレルギー発症が有意に上昇していたのだ(Lack G,et al.N Engl J Med.2003;348:977-85.)。

 国内でも、経皮感作と食物アレルギーの関連を示す事例が発生している。「茶のしずく石鹸」の使用による小麦アレルギー発症だ。この事例では、茶のしずく石鹸に含まれる小麦の加水分解成分「グルパール16S」を毎日皮膚に塗ったことで経皮的に感作が成立。小麦への食物アレルギー発症につながったと考えられている。

 「経皮感作をきっかけに食物アレルギーが発症することを示す明確な事例だと捉えている」と神奈川県立こども医療センターの栗原和幸氏は説明する。また、「完全人工乳で育った乳幼児で卵への感作が成立していることもこの仮説で説明できる」と、経皮感作仮説が広く受け入れられ始めている理由を語る。

経皮感作が諸悪の根源?
 食物アレルギーだけでなく、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などにも経皮感作が影響するとの考えもある。「まず皮膚のバリア機能の低下が起き、それに伴いアレルゲンに対する経皮感作が成立する(図A)。これが、食物アレルギーや喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患を次から次へと発症するアレルギーマーチにつながると考えられるようになっている」と話すのは、国立成育医療研究センターの斎藤博久氏だ。

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