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特集◎困った患者2014 Vol.2
【パターン1】診断や治療方針に意見する患者
ネット情報をうのみ、自分が望む治療を強要

Q4 疾患や治療についての知識を持ち、診断や治療方針に意見する患者は増えていると思いますか?(*クリックすると拡大表示します)

医学書やネットで情報収集
まれな疾患まで鑑別を要求

 「医療に絶対はないのに、『先生は100%断言されるんですね』と何度も確認されて困った」──。関西地方の大学病院に勤務する整形外科医のA氏はこう話す。

 ある日の外来で、40歳代の女性が腰痛を主訴に受診した。患者は教職に就いており、落ち着いた雰囲気だったという。診察で明らかな神経学的異常がなかったため、自己管理指導と消炎鎮痛薬の処方で数日から1週間経過観察することをA氏が説明すると、患者はこう切り出した。

 「癌の脊椎転移の心配はないですか? 細菌や真菌感染による炎症性疾患は? 脊髄腫瘍や脊髄空洞症は考えなくてもいいのでしょうか」
 突然矢継ぎ早に質問され、A氏は面食らった。どうやら患者は医学書やインターネット、知り合いの医師への相談などで情報を得て、こうしたまれな鑑別疾患を挙げてきたようだった。

 腰痛の場合、初診時に器質的病変が確認できることはほとんどない。また、多くは時間がたてば自然に治癒する。こうした説明をしても、聞き入れる様子はなく、「癌の転移は完全に否定できるんですか」「ヘルニアの初期症状として腰痛の報告もあります」と主張。MRIやPET-CTによる検査を強く希望してきた。

 さらに、A氏が椎間板ヘルニアや神経痛の所見がないことを説明しても納得せず、腰痛診療ガイドラインを取り出して内容を示しても、「医学書やインターネットでは、確定診断にCTやMRI、PET-CT、骨シンチグラフィーが有用と書いてありました」と言って譲らない。

 最初は落ち着いた雰囲気だった患者だが、自分が想定していた内容から外れた説明に対してはヒステリックな表情・トーンで反論し、「先生は100%断言されるわけですね」「診断が間違っていたらどうしてくれるんですか」「私が心配している病気は一切、考えなくていいのですね。本当に信じていいのですね」と、言質を取るような質問を繰り返した。

 こうしたやり取りで、あっという間に1時間近くが過ぎていた。

 「自分の意にそぐわない説明には、決して納得してもらえなかった。やり取りに時間がかかってしまい、外来で待っている他の患者さんに対して申し訳なかった」とA氏は言う。結局、患者は納得しないまま診察を打ち切り、経過観察のための再診予約も希望せず、診察は終わった。

 「こうした患者は、年に数人は経験している。きちんと統計を取っているわけではないが、女性の教師が多い印象だ」とA氏は話す。

検査前から手術を指定
「治ると保証しろ」と要求

 他の病院で「この治療がいい」と説明されたという患者の主張に振り回されたのは、関東地方にある地域の基幹病院の耳鼻咽喉科に勤務するB氏だ。B氏は、勤務先で鼻の専門外来を担当している。

 患者は20歳代の女性で、副鼻腔炎のため専門外来を紹介受診した。問診も早々に、患者は「前にかかっていた病院で『鼻茸を切除すれば副鼻腔炎が治るし、炎症の予防にもなる』と言われたので、今すぐ手術してほしい」と言い出した。

 だが、B氏の診察では、患者は治りかけの急性副鼻腔炎で、手術の適応ではないと考えられた。鼻茸は認められたが、小さいもので切除の必要性は低いと思われた。

 B氏がこう説明をすると、患者の態度が一変。「前の先生が手術が必要だと言っていたのに、なぜできないんですか!」と詰め寄ってきた。

 「インターネットや本などでも鼻茸の切除について調べているようだったが、自分にとって都合のいい情報だけを信じているため、話が全くかみ合わなかった」とB氏は振り返る。どれだけ説明しても患者が納得しないので、CTを撮影したが、粘膜がやや肥厚しているのが認められただけだった。

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