臨床研修制度によるマッチングの導入により、研修医の多くは大学病院から市中病院に流れた。その分布の変化は、地域医療に大きな混乱を与えることとなった。
医学部卒業生の7割が大学病院の医局に入局していた制度導入前は、医局が医師を派遣することで地域医療を支える仕組みが保たれていた。だが、制度導入により、都市部にある市中病院に研修医が集中。大学医局が人手不足となり、医師派遣機能は低下した。さらに大学病院は指導医を確保するため、地域の医療機関に派遣していた指導医層を引き戻した。
これらの影響により、地域の医療機関における中堅医師の過重労働が社会的問題ともなった。日経メディカルOnlineの医師会員を対象とした調査で「臨床研修制度の導入は失敗だった」と回答した医師(495人)のうち、最も多い343人が「医師の地域偏在が助長された」ことを理由に挙げていた。「制度導入に伴い、最初の数年は大きな混乱を来したのは事実だ。混乱は、地方で激しかったため、制度に対する批判も大きかったのだろう」と国立病院機構の桐野髙明氏は言う。
偏在是正に向け定員を設定
厚労省は第1回目の制度の見直しで、研修希望者数に見合った募集定員の総枠を設定するとともに、人口や医師養成状況、地域の特性などに応じて各都道府県の研修医の募集定員に上限を設けた(図7)。
2014年4月号特集◎臨床研修制度で医療は前進したか
特集◎臨床研修制度で医療は前進したか《vol.5》地域偏在
研修医の都市部集中は緩和されたのか
定員上限の設定で都市から地方へ
2014/04/13
加納亜子=日経メディカル
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