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特集◎開業で医療を変える Vol.7
精神疾患患者を在宅で丸ごと支援
おおいしクリニック(京都市南区)院長 大石 豊氏

おおいし ゆたか氏
2003年奈良医大卒。洛和会丸太町病院・音羽病院で研修を受け、いわくら病院、京都博愛会病院、たかぎクリニックなどを経て、10年9月に開業。
写真:行友重治

 大石は遅咲きの精神科医だ。

 20歳代は立命館大理工学部を卒業後、大学院の入試に落ちて、高校の非常勤講師や家庭教師などをして過ごした。29歳の時、冷やかし半分で受けた奈良医大に「たまたま合格」(大石)したが、その理由を、「アルバイトを通じて入試のテクニックが蓄積していたためだろう」と笑う。

 35歳で医師免許を取得したが、メジャーな診療科でやっていく自信がなく眼科に入局。しかしその医局にもなじめず、出身地の京都に帰り、洛和会丸太町病院でスーパーローテート研修を受けた。大石は同病院のスーパーローテート研修生第1号だった。

 その後、研修中に知り合った医師の紹介で、精神科の単科病院に勤務し、精神科医師としてのキャリアが始まったのが37歳の時だった。

 そんな大石の人生を、ある人物との出会いが大きく動かすことになる。

 その人物とは、24時間・365日対応で、統合失調症などの重度の精神疾患に対応する在宅専門診療所たかぎクリニックを開いた高木俊介氏。

 重度の精神疾患患者では、様々な理由で入院が長期化したり、退院してもすぐに再燃して病院に戻るなど、入院が治療の中心となりがちだ。そんな中、どこまでも在宅で患者を支援しようとする高木氏の活動を、当時の大石は、「最初は、道楽でやっているのかと思った」ほどだった。

 高木氏のチームに加わり、それまでの常識では精神科病棟から退院できないような重度の精神疾患患者が、自宅でのびのびと生活しているのを目の当たりにするようになった大石は、「もしも自分が発症したら、地域で診てほしい」と強く思うようになる。

 2010年9月、42歳で精神科を専門とする在宅療養支援診療所として、おおいしクリニックを開業。大石以外のスタッフは3人で、家賃6万5000円の物件を借りてのスタートだった。開業資金は約500万円で、「その半額以上が地元の医師会に入会するための費用だった」と苦笑いする。

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