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特集◎開業で医療を変える Vol.5
多角的に診る総合診療を強みに
中野クリニック整形外科・内科(東京都町田市) 富田滋久氏

とみた しげひさ氏
1996年順天堂大卒。同大順天堂医院での内科研修を経て、2000年同医院総合診療科入局。03年、中野裕治氏と共同で開業。
写真:秋元 忍

 「夜寝ていると胸が痛くなり、息苦しくてしょうがない。私はこのまま死んでしまうのではないかと、とても心配だ」

 数年前、90歳の女性患者がこう訴えて、「総合診療医」の富田の元を訪れた。それまで他の医療機関にかかって様々な検査を受けてきたが、診断がつかず、医師からは「気のせい」「年齢のせい」などと言われるばかり。何十年も、この胸の痛みに悩まされてきたという。

 富田は、疼痛の性質や局在状況、継続時間(持続的、間欠的)、疼痛を伴う姿勢などについて丁寧に問診。その結果、最終的に疑ったのが逆流性食道炎だった。今でこそテレビコマーシャルが盛んに流されて一般の人たちの間でも認知度は高まっているが、当時は診察しても気づかれにくい疾患だった。

 とりあえずプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方。すると、症状はあっという間に改善。女性患者は数十年の苦しみから解放されたことをとても喜び、富田に最大の感謝の意を表した。

 「症状を多角的に診療することができるのが、総合診療ならでは。多彩な疾患を抱えがちな高齢患者のニーズにも応えやすい」と富田は語る。

母の言葉で“町医者”目指す
 学生時代に母を亡くしている富田。「優しい医師になってね」─。

 亡くなる直前に掛けられた母のこの言葉が、患者個々と密な関係を築ける“町医者”を目指すきっかけとなった。医学部を卒業後、順天堂大順天堂医院の総合診療科に入局。総合診療科はあらゆる面から疾患を診るすべを身に付けなければならないので、他科よりも様々な診療科の医師とやり取りする機会が多く、とても勉強になったという。

 開業に踏み切ったのは、医学部卒業から7年後の2003年。大学の同級生だった整形外科医の中野裕治氏に誘われ、首都圏のベッドタウンである東京都町田市に無床診療所の中野クリニック整形外科・内科(院長は中野氏)を共同で開設した。

 整形外科の疾患だと思って来院する患者の中には、実は内科疾患である人は少なくない。関節リウマチなどはその典型だ。逆に、めまいで内科を受診したが、整形外科分野の頸椎症だったという例もある。その点、整形外科と内科を同じクリニックで運営すれば、両面からきめ細かく患者を診察できるわけだ。

 整形外科医と一緒に開業したことは、富田にとって開業早期から内科の患者をスムーズに確保できるメリットもあった。

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