HBVの持続感染者の多くは、一過性肝炎を経てHBe抗原セロコンバージョンを起こし、自然経過で非活動性キャリアになる(Vol.6「欧米型のHBV遺伝子型Aでは急性肝炎からの慢性化も」図2参照)。非活動性キャリアでは肝炎が鎮静化するため治療を必要とせず、慢性肝炎や肝硬変の患者に比べて発癌もしにくい。また、核酸アナログ治療を行って肝炎が鎮静化した患者でも発癌が減る。ところが最近、非活動性キャリアと思われていた患者や、核酸アナログ治療を受けてHBV-DNAが陰性化、ALT値が正常化している患者からも肝癌が見つかって問題になっている。
HBs抗原陽性を指摘され、精査目的で武蔵野赤十字病院を受診した56歳の男性は、肝生検の結果、肝硬変と判明し、その後、肝癌を発症した(症例3)。男性患者のHBe抗原は陰性で、ALT値も30U/L以下。HBe抗原セロコンバージョンを起こした非活動性キャリアとみられていたが、発癌に至った。「恐らくHBe抗原が陰性化する前に肝組織の線維化が進み、発癌したのではないか」と同病院消化器科部長の黒崎雅之氏はみる。
2013年9月号特集◎ゴール見えた!ウイルス肝炎
2013年9月号特集◎ゴール見えた!ウイルス肝炎 Vol.8
HBVの非活動性キャリアにも発癌リスク
変わるB型肝炎の常識(その4)
2013/09/19
久保田文=日経メディカル
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