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2013年9月号特集◎ゴール見えた!ウイルス肝炎 Vol.7
HBe抗原陰性の既往感染者で再活性化することも
変わるB型肝炎の常識(その3)

 従来、急性肝炎の後、HBs抗原が陰性化し、HBs抗体またはHBc抗体が陽転化した既往感染者は、ウイルスが排除された状態にあると考えられていた。しかしHBV-DNAの測定技術が向上した1990年代後半、ウイルス排除と考えられていた既往感染者の血清中からHBV-DNAが検出され、肝細胞内には複製可能な形でウイルス遺伝子が残っていることが分かってきた。今では既往感染者は、宿主の免疫が働いて、ウイルスの増殖を抑え込んでいる潜伏感染状態と考えられるようになっている。

 こうした新知見と前後して表面化してきたのが、既往感染者のHBV再活性化だ。以前から、HBs抗原陽性の持続感染者にステロイド療法を実施し、急に中止すると肝炎が増悪することが知られていたが、HBs抗原が消失した既往感染者でも同様の再活性化(de novo B型肝炎)が起きることが分かってきたのだ。

 当初問題になったのは、癌患者に対する化学療法だ。HBVの既往感染者で、悪性リンパ腫を発症した患者がリツキシマブ(リツキサン)にステロイドを併用するR-CHOP療法を受けると、治療後に肝炎を発症。劇症化した患者が相次いで死亡した。その後、HBVの既往感染者で、関節リウマチや炎症性腸疾患の患者でも生物学的製剤やメトトレキサート、ステロイドなどの治療中や治療後に肝炎を発症することが判明。鹿児島市立病院長の坪内博仁氏は、「治療内容によって再活性化や肝炎発症、劇症化のリスクは異なる。関節リウマチや炎症性腸疾患では、肝炎発症リスクは比較的低く、発症しても軽症のことが多い。ただ、まれに重症化するので注意が必要だ」と話す。

 HBVの既往感染者は高齢者に多く、地域によっては50%にも達する。しかもその多くが、過去にHBVに感染した事実を知らずにいる。再活性化を予防するためには、免疫抑制療法や化学療法を実施する全ての患者について感染の有無を調べることが必要だ。HBs抗体またはHBc抗体が陽性で、既往感染者と認められた場合は、HBV-DNA量を定量。治療開始前に検出限界未満であっても、治療中にウイルスが増殖する可能性があるため、HBV-DNA量やALT値を適宜モニタリングする。

 HBV-DNAの増幅が始まってからHBs抗原が陽転化し、肝炎を発症するまでには十数週間の時間的余裕がある。治療中にHBV-DNA量が検出感度以上になった患者に対しては、肝炎発症を予防するため核酸アナログのエンテカビル投与が推奨されている(図3)。核酸アナログは、治療終了後、少なくとも12カ月は投与を続けることが必要だ。

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