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日経メディカル2012年10月号「特集 医師人生の岐路と選択」転載 Vol.2
患者が急増する高齢者医療に転身
Part1 医師6人の転機と決断【転科 その2】

蓮田よつば病院(埼玉県蓮田市)院長
菅藤啓氏(56歳)
1956年秋田県生まれ。81年秋田大卒、同大第一外科入局。米国海軍病院、兵庫県立こども病院、都立清瀬小児病院、上尾甦生病院などを経て、2006年尾野病院長に就任。11年から現職。

 わが国では高齢化が急速に進み、高齢者医療費の急増が問題となっている。特に認知症患者は2050年には350万人を超えるともいわれ、今後、医療財政を圧迫する要因となるのは確実。こうした現状に危機感を抱き、高齢者医療の充実と医療費抑制の両面で寄与できないかと考え、専門の小児外科から高齢者医療に転身したのが蓮田よつば病院院長の菅藤啓氏だ。

 菅藤氏は1981年の大学卒業後、全国の医局から医師を受け入れている、小児外科分野で有名な複数の病院に勤務。救急医療にも従事して年200件以上の手術をこなしてきた。

 その中で同氏が学んだのが、エビデンス医療だ。診断法や手技が異なる様々な大学から医師が集まっていた派遣先の病院では、患者の全身管理をしっかり行い無駄な検査・処置を避けて、エビデンスに基づいた治療をするよう徹底されたという。

 ところがその後、地方の病院に赴任するようになると、「多くの診療科でエビデンスのない不要な検査や治療がされていることに気づいた」(菅藤氏)。卒後20年弱がたった90年代末のことだった。一方で、日本経済が下り坂となり、国家財政を圧迫する医療費の抑制が強まりつつあった。同氏の胸には、「無駄な治療を改善しなければ、本当に必要な医療が必要な人に提供されなくなるのではないか」という思いが芽生えた。

 40歳を過ぎ、小児外科の第一線で働くのは体力的に厳しくなってきたことも自覚していた。限られた患者を診るのではなく、前述の考えのような事態に陥らないようにするためにも、より対象患者が多い分野の診療に従事したいと考え始めた。

 そんな時、青森県五所川原市の慢性期病院である尾野病院の院長就任の話が舞い込んだ。菅藤氏は良い機会だと考えて、2006年に高齢者医療の道に進むことにした。

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