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日経メディカル2012年9月号特別編集版「神経・精神疾患のトピックス」転載
認知機能の低下は食い止められるか? 最新治験動向、運動効果のエビデンスも
【特集】ここまで分かったアルツハイマー病(Part 2)

 Part1で紹介したように脳内変化の進行過程が明らかになる中、病態に直接働きかけて発症を予防、あるいは進行を阻止する根本治療薬の開発が進められている。現在、アミロイドベータ)やタウなどを標的とした臨床試験が進行中だ。

 しかし8月6日、米国Pfizerおよび米国Johnson&Johnsonは、期待していた結果が得られなかったため抗Aβ抗体bapineuzumabの開発を中止したと発表した。さらに8月24日には米国Eli Lillyが、抗Aβ抗体solanezumabの第3相試験において、主要評価項目を達成できなかったと発表。両薬の第3相試験の詳細な結果は、秋にも発表される見込みだ。

発症前患者の介入試験もスタート
 現在進行中の臨床試験の多くは、軽度から中等度の、発症後のAD患者を対象としている。

 しかし、家族性アルツハイマー病AD)をはじめとする発症リスクの高い人を対象とした、発症前からの介入試験も計画されている。

 その1つは、ADCS(Alzheimer’s Disease Cooperative Study)が提案しているA 4 trial。AβPET陽性だが、未発症の70歳以上の高齢者を対象とした二重盲検プラセボ比較試験で、試験期間は3年間。12月には使用する薬剤を決定し、2013年半ばから対象者の募集を開始するという。

 一方、家族性ADのネットワークDIAN Therapeutic Trials Unit(DIAN-TTU)でも、2012年後半から2013年前半に3種類の薬剤を選び、早期患者の予防試験を開始する。

 さらに、APIAlzheimer’s Prevention Initiative)は、米国Genentechが開発中のcrenezumabを用いた抗アミロイド療法の発症予防効果について、60カ月の二重盲検プラセボ比較試験を計画中だ。対象は、家族性ADの血縁者324人で、うち300人は同疾患が多発するコロンビアの大家系から募る。

IVIGの3年間の投与成績が明らかに
 できるだけ早期の段階から介入して発症そのものを阻止しようとする治療戦略が急務となる一方で、発症後の認知機能の低下をどれだけ止めることができるかについても、盛んに研究が進められている。

 今回の会議での朗報の1つは、免疫グロブリン大量静注療法(Intravenous Immunoglobulin:IVIG)の第2相試験後の長期成績だ。

 第2相試験の参加者は軽度から中等度のAD患者24人。全18カ月の試験で、6カ月間二重盲検プラセボ比較試験を行い、その後12カ月は全参加者にIVIGを何種類かの用量群に分け、オープンラベルで投与した。

 今回は、この第2相試験の参加者に対し、治験終了後に引き続き18カ月間IVIGの継続投与(0.4g/kg/2週間)を行い、合計36カ月の長期間の効果を評価した。評価項目はCGIC(総合的臨床症状評価)、ADAS-Cog(認知機能評価)など。

 結果、24人中16人が36カ月間の試験を終了し、プラセボ期間なしで36カ月間IVIGを投与された群は、最初6カ月間プラセボだった群よりもおおむね評価スコアの低下が少なかった。

 なかでも、IVIGの投与量が36カ月間ずっと0.4g/kg/2週間(至適投与量)だった群(4人)は、すべての評価スコアが36カ月間ベースラインから低下しなかった(図3)。

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