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日経メディカル2012年9月号「特集 その検査、ホントに必要?」転載 Vol.10
活動状態(PS)が3~4の固形癌患者には積極的治療を行わない
【悪性腫瘍(その2)】

 ASCOが勧告で1番目に挙げているのがこの項目だ。PSが3~4の患者のほか、「エビデンスに基づく治療で利益が得られなかった患者」「治療の継続に強いエビデンスがない患者」なども、積極的治療を行うべきでないとしている。

 その理由をASCOは、「抗癌剤などによる治療は、上記のような患者には利益をもたらす見込みがない。このような場合、QOLの改善や生存率の延長が見込める緩和ケアなどに重点を置くべきである」と述べる。

 エビデンスに基づけば当然ともいえる考え方だが、現場では実践が難しい。そうした実態を踏まえ、学会は改めて勧告したとみられる。

 日本臨床腫瘍学会評議員の勝俣範之氏(日本医大武蔵小杉病院腫瘍内科部長)は、「ASCOの勧告はエビデンスが示す通りのことであり、患者の利益を考えるとそうすべきであることは間違いない。しかし日本の現状では、癌化学療法の専門医が少ないこともあり、エビデンスの乏しい低用量の抗癌剤を用いた治療や免疫療法が行われるなど、勧告通りにはなっていない」と語る。

 もちろん、これには医師の姿勢だけでなく、患者からの要望も大きく関与している。抗癌剤治療を行わないことを患者が受け入れないケースが多く、「わずかでも回復の望みがあれば治療を続けたい」という強い要望に押し切られ、不利益のある治療が継続されがちだ。

 また、勧告に従う場合も注意が要る。勝俣氏は「詳細な説明なしに『あなたは抗癌剤の適応ではない』として、見放すように緩和ケアに紹介するケースがある。それが患者が転院を繰り返すなどの不利益を生み出す要因となる」と指摘する。

 こうした問題を解決するには、医療者が患者と十分なコミュニケーションを取ることが不可欠だ。勝俣氏は「学会として、癌治療の正確な情報を伝える方法を検討していきたい」と話している。

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