
8月25日からストックホルムで開催されたESC2010でも、現在開発中の抗凝固薬に注目が集まった。
心房細動(AF)の患者は現在、欧州で約600万人、米国で約230万人とされ、高齢化に伴い増加傾向にある。状況は日本でも同様で、発作性も含めるとAF患者は約150万人、10年後には200万人に達するともいわれている。
これらのAF患者では、心原性脳塞栓症の発症リスクが約5倍高いとされ、世界で毎年約300万人がAFに起因する脳卒中を発症している。しかも、その症状は重篤で、後遺症のために要介護となることも少なくないため、医療費に及ぼす影響などが世界的に大きな問題となっている。
AF患者の脳卒中を予防するには、抗ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)による抗凝固療法が有効だ。しかし、プロトロンビン時間のINR(International normalized ratio)値など凝固能の定期的な検査が必要で、食物や薬物との相互作用にも注意しなければならないなど、管理が煩雑なため、その実施率は5割前後と低い。臨床現場では、より簡便で安全な新しい経口抗凝固薬の登場に期待が集まっている。
8月25日から9月1日にかけてスウェーデン・ストックホルムで開催された欧州心臓学会(ESC2010)でも、現在開発中の抗凝固薬の臨床試験の結果がHot Lineセッションで報告されたほか、メーカー共催のサテライトシンポジウム、プレス向けイベントなどでも新しい抗凝固薬の話題が目立った。