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本誌連動◇変わる日本のワクチン Vol.3
臨床応用目前のロタウイルスワクチン
急性胃腸炎の重症化を抑制

「ロタウイルスワクチンには医療費だけでなく労働損失費用を減らす効果も期待できる」と話す大阪労災病院の川村尚久氏。

 米国から遅れること数年、国内でもロタウイルスワクチンの臨床応用が目前に迫ってきた。グラクソ・スミスクライン(GSK)と万有製薬の2つのロタウイルスワクチンが承認申請中だ。大阪労災病院小児科部長の川村尚久氏は、「原則としてはすべての小児に、特に保育園などに子どもを預ける家庭や、兄弟の多い家庭の乳幼児に接種を勧めたい」と話す。

年間入院者数は約8万人
 糞口感染で広がるロタウイルスは、小児の急性胃腸炎の主要な原因であり、まれに痙攣や意識障害を呈する脳炎、脳症の原因ともなる。嘔吐や下痢などを伴う重症例では入院の上、脱水症状を防ぐ水分補給や輸液療法が必要だ。国内での感染のピークは冬季で、生後6カ月から2歳の小児が胃腸炎を発症することが多い。5歳以下の小児では、毎年7万8000人がロタウイルスによる胃腸炎で入院し、約80万人が外来を受診すると推計されている。

 ロタウイルスはRNAウイルスで、ウイルス粒子外層の蛋白質であるVP7とVP4が、それぞれG血清型とP血清型を決定する。P血清型は、血清学的な方法ではなく、遺伝子の塩基配列で遺伝子型を決める方法がとられており、遺伝子型はP[8]のようにかっこ付きで表される。

 年次や地域で多少の変動はあるものの、先進国で流行するロタウイルスの90%以上を、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、G9P[8]の血清型が占めており、中でも半分以上を占めるのがG1P[8]だ。

初のワクチンは腸重積で撤退
 ロタウイルスに感染したことのある小児は再感染しても、大半が胃腸炎を発症しないことが知られている。世界では、こうした免疫反応を人為的に誘導し、胃腸炎の重症化を防ぐためのロタウイルスワクチンが開発されてきた。

 1998年、米国で初のロタウイルスワクチン「RotaShield」が承認された。同ワクチンは、サルロタウイルスを親株にした4価の組み換え生ワクチンで、胃腸炎の重症化や入院を要する重症例を減らす効果が認められていた。ところが、RotaShield接種後、腸重積が高頻度で起きることが疑われ、同ワクチンは約1年で市場から撤退した。

 腸間膜のリンパ節でウイルスが増えて炎症が起き、腸重積を引き起こすのではという仮説が示されたものの、RotaShieldが腸重積の原因だったかどうかについて結論は出ていない。ただし、腸重積を発症した症例には、通常よりも遅れて接種を受けたために、接種時期が腸重積の好発時期である生後6カ月以降に重なった小児が多かった。そのため、これ以降に開発されるロタウイルスワクチンでは、腸重積の紛れ込みを減らすためにも、早めに接種を終わらせることが重要だと考えられるようになった。

 現在、臨床応用されているロタウイルスワクチンは、GSK社の「Rotarix」とメルク社の「RotaTeq」の2つ(表4)。世界百数十カ国で少なくともどちらかのワクチンが使われている。

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