日経メディカルのロゴ画像

本誌連動◇よみがえる感染症 Vol.4
【B型肝炎】化学療法でウイルスが再増殖
治癒と思われた症例が劇症化

 今年2月、関節リウマチなどで使用される免疫抑制薬メトトレキサートの添付文書が改訂された。同剤の投与によって、B型肝炎ウイルスHBV)またはC型肝炎ウイルスのキャリアに重篤な肝炎や肝障害が発現したり、HBVが活性化し肝炎が発現することが報告されたとして、肝炎ウイルス増殖の徴候や症状の発現に注意するよう明記されたのだ。

HBs抗原陰性でも肝炎発症
 HBs抗原陽性のHBV持続感染者(キャリア)に免疫抑制薬や抗癌剤を投与すると、HBVが急激に増殖し、劇症肝炎を起こすケースが臨床現場で問題になっている。最近では、治癒と考えられていたHBV感染既往例(HBs抗原陰性でHBc抗体またはHBs抗体が陽性)でも、劇症肝炎を起こし得ることが明らかになり、肝臓専門医の注目を集めている。

 国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター長の溝上雅史氏は、「検査精度の向上も相まって、従来では治癒と考えられていたケースを長期的に追跡すると、肝細胞内ではごく低レベルでHBV-DNAが複製されていることが、2000年代に入って明らかになった。HBVは一度罹ると一生潜在し、治療などがきっかけで再活性化することが分かってきた」と話す。

 HBV感染既往例は、ウイルスが完全に排除されているのではなく、細胞性免疫によって増殖が抑えられている状態なのだ。従って、化学療法などで宿主に強い免疫抑制が起きればHBVは急速に増殖する。化学療法が終了すると、増殖したHBVに対して強い免疫応答が起こり、肝炎が再燃するというわけだ。

 福岡大消化器内科准教授の早田哲郎氏は、「化学療法や免疫抑制療法などが進歩して、より強力な抗癌剤や免疫抑制薬を使用するケースが増えているため、こうした症例が報告されるようになってきた。一方で、肝機能障害が出現しても化学療法の副作用だと考えられているケースもまだ多い」と話す。

 HBV感染既往例は、日本人の20%近くいるといわれる。そのうち約7割は不顕性感染のままHBs抗原が陰性化しており、本人にHBVに感染したという認識がない人も多い。

27%が劇症化し、全例死亡
 感染既往例のHBV再活性化が問題なのは、いったん肝炎を起こすと劇症化しやすく死亡率も高いからだ。全国調査によれば、再活性化による肝炎発症者のうち27%が劇症化し、その全例が治療を行ったものの、死亡していた(図1)。「特に日本人に多い遺伝子型の肝炎は、欧米で多い遺伝子型と比較して劇症化しやすい」と溝上氏は指摘する。

この記事を読んでいる人におすすめ