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本誌連動◇よみがえる感染症 Vol.2
【成人T細胞白血病】キャリアが全国に拡散
母子感染対策の徹底が急務

 成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型HTLV-1)への感染によって起こる難治性の疾患だ。いったん発症すると予後は悪く、有効な治療法は発見されていない。

 主なHTLV-1への感染経路は、母乳を介する母子感染(垂直感染)と精液を介して男性から女性へ感染する水平感染。キャリアのATL生涯発症率は約5%で、潜伏期間は50~60年。ただし、水平感染によるATLの発症は現時点で報告されていない。垂直感染は、母乳を与えないことで、子どもの感染リスクを約30%から数%まで減らせるという。

 しかし、「ATLは九州地方の“風土病”と思われ、その結果、対策で後れを取ってきた」と、HTLV-1感染の実態調査を取りまとめた、元国立感染症研究所血液・安全性研究部部長の山口一成氏は話す。

 1991年の厚生省(当時)研究班の報告書では、「キャリアの数は地域差があり、全国的な検査や対策は不要」とされた。また、放置してもキャリアは自然に減少し、いずれゼロになるとの試算も行われた。

 ところが、山口氏らが2006~07年に、16~65歳の初回献血者約120万人のHTLV-1の陽性率を基に推計したところ、88年の調査で120万人だったキャリアの数は、約108万人と顕著に減ってはいなかった。しかも、関東・中部地方ではキャリア数が増加し、キャリアが全国に拡散している実態が明らかになった(図1)。ATLの新規発症者数は、88年は約700人/年だったが、07年は約1030人/年に増加していた。

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