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特集●中医協委員・関係者が語る「2010診療報酬改定」Vol.9
今回の改定は100点満点で59点
中医協委員(国立がん研究センター理事長) 嘉山孝正氏

――2009年10月から中央社会保険医療協議会中医協)の委員になった。改定の議論に直接かかわるに当たって、どのようなことを考えていたのか

嘉山 中医協という組織の役割は、実は細かくは定義されていない。「診療報酬の改定に関する審議をする」とされているが、具体的に何を議論するかは、明確には定められていないのだ。

 委員を受けるに当たり、厚生労働大臣政務官の足立信也氏からは、「中医協を変えてくれ」と言われていた。私は中医協が“決められたパイの奪い合い”では仕方ないと思っていたし、従来の流儀にとらわれず、現場の代表として発言するのが自分の中医協での役割だと思って議論に臨んだ。私は就任直後に中医協会長の遠藤久夫氏に「学習院の教授ともあろう人がラジカルな議論をしないで何なんですか」と噛みついたが、それもそのような思いがあったからだ。

 また、中医協を変える上で必要なのは、現場の生の声を伝えることだと考えていた。今回、正しい情報を基にした議論が十分にできたとは言えないまでも、議論できる雰囲気は醸成されたのではないか。

――「パイの奪い合い」ではない診療報酬の改定とはどのようなものなのか。

嘉山 2004年に発覚した汚職事件によって、診療報酬の改定率は中医協における議論の対象から外されてしまった。しかし、医療費の総額が決められた中での議論では、施設の規模・種類や診察科の違いによる内輪もめになりがちで、最後は声の大きさで報酬の増減が決まってしまう。

 改定率の決定は、最後は政治で決着せざるを得ないとしても、医療の現場で必要とされる額を中医協で議論した上で、政府に訴えていくべきだろう。「これだけかかっている」と説得力のあるデータを示せれば、医療費を増やす議論にもつながるのではないだろうか。そうなれば、“パイの奪い合い”ではない改定も可能になるはずだ。

 中医協委員はこれまで、特定機能病院が手間がかかる医療を行っていることを知らなかった。現場の情報やデータが中医協まで上がっていなかったからだ。だからこそ、高度急性期医療の報酬は軽視され、医学部がある国立大学文部科学省の補助金で医療を行い、それでも1兆円もの負債を抱えることになった。自治体病院に多額の繰り入れがされているのも、急性期医療が診療報酬では賄えないため。これは健全な状況ではない。

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