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特集●CT検査の発癌リスクを考える Vol.2
低線量域の被曝と発癌の関係を探る

 米国立衛生研究所NIH)は、付属の臨床センターで放射線被曝を伴う検査を実施する際に、毎回の被曝線量を記録する方針を決定した。X線検査による被曝が人体に与える影響を調査するための基礎データの収集が目的で、CT検査およびPET/CT検査に適用される。

 NIHのRadiology and Imaging Sciences部門のトップであるデビッド・A・ブルムク氏が、米国放射線学会誌2010年2月号で発表した[5]。臨床センターに放射線診断装置を売る企業は、被曝線量を患者の電子カルテに記録するためのソフトウエアを装置に備え付けておかなければならなくなる。

 前回の記事では、X線検査が人体に与える影響をシミュレーションした論文[1][4]を紹介したが、発癌の推定値を求めるに当たっては広島・長崎の原爆生存者を追跡調査したデータを使っている(囲み記事参照)。

 一方、今回NIHが記録するのは、CT検査を受ける患者の被曝線量。数十年にわたって追跡できれば、CT検査と発癌リスクとの関係について、貴重なデータが得られるはずだ。

被曝線量に、人体に悪影響を及ぼさない“閾値”はあるか?
 放射線が人体に与える影響は、確定的影響と確率的影響とに分けられる。確定的影響は、被曝線量がある閾値を超えると、確定的に(=必ず)表れる影響のことで、脱毛や不妊などは確定的影響を受ける。もう1つの確率的影響とは文字通り、ある確率で表れる影響のことで、発癌は確率的影響を受ける。これまでの疫学研究からは、高線量域では発癌リスクの増加が認められるものの、100mGy程度の低線量域では不確かさが大きく、有意な差は認められていない[6]

 しかし、それを根拠に「低線量域では人体に悪影響は及ぼさない」と考えるか、有意差が検出できていないだけで「低線量域でも人体に悪影響を及ぼす」と考えるかは、専門家の間でも意見が分かれている。後者の、たとえ被曝線量が少なくても発癌リスクはゼロにならないという考え方は、閾値なし直線(linear non-threshold:LNT)仮説と呼ばれている。

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